研究課題/領域番号 |
20K13544
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
三科 仁伸 拓殖大学, 商学部, 准教授 (10825152)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 拓殖大学 / 植民地 / 人材供給 / 帝国日本 / 卒業生 / 台湾 / 朝鮮 / 満洲 |
研究実績の概要 |
本研究課題に対して,新型コロナウィルスの蔓延により十分な資料調査ができない中であったが,これまで収集した資料を中心に分析をすすめるとともに,国立国会図書館などで,関連する資料の収集をおこなった。 2021年度については,2020年度のまでの研究成果の相対化を通して,より広い視点からの分析を試みた。具体的には,前年度までは,戦前期日本において実業界への最大の人材供給機関であった慶應義塾大学とその出身者の活動に着目して分析をおこなったが,当初の課題に掲げた研究対象の相対化を進めるために,2021年度から拓殖大学における同様の事例について,研究を進めた。同様の研究手法による分析を通し,戦前期日本における実業への人材供給に対する包括的な知見をえることが目的である。 拓殖大学は,戦前期日本において,台湾や朝鮮などの帝国日本が獲得した植民地経営に必要な人材を養成及び供給機関であることから,これまでの研究成果を20世紀前半における帝国日本の拡大といった観点からも再検討できる恰好の素材と考えられる。同大学には,卒業生の就職先企業や居住地を記載した『大学一覧』が保存されており,その内容を,『帝国文部省年報』と比較検討することにより,卒業後の動向を分析している。加えて,『大学史』などの記載を踏まえて,その特質について,研究を進めた。 以上の調査分析により,一定の成果を確認できたことから,後述するように,その内容について,国際学会XIX World Economic History Congressで報告する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は,社会全般における新型コロナウィルスの感染拡大状況が継続していたため,当初予定していた資料所蔵期間などへの調査を十分に実施することはできなかったが,上述の通り,拓殖大学に戦前期の卒業生の動向を示す資料収集を行うとい当時に,『帝国文部省年報』などの統計資料の分析により,研究活動をおこなうことできた。 また,広く関連文献を収集し,先行研究と参照しつつ,当該研究における理論的な分析をおこなった。 そして,後述するように,2022年度における国際学会XIX World Economic History Congressにおいて,その成果の一部を報告する計画であることから,本研究の進捗状況については,「(2)おおむね順調に進展している」と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように,前年度までの研究成果に基づき,国際学会XIX World Economic History Congressのセッション”Web of Ties: Supply and Circulation of Colonial Resources in Early 20th Century East Asia”において,”Supply of Human Resources and Expansion of the Japanese Empire: Focusing on Alumni of Takushoku Univ. in the Pre-War Period”と題した報告をおこなう予定である。その成果を踏まえ,報告内容について,学術論文とした公刊する計画である。 また,その成果を踏まえつつ,他大学の事例についても分析をおこない,当初の課題である戦前期における高等教育機関による実業への人材供給について,より相対的な視点から議論を試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大により,当初予定していた資料調査が困難になったことが挙げられる。特に,歴史資料の調査の特性上,当初計画していたアルバイト学生を雇用して大規模調査などの実施が困難であったことにより,次年度使用額が発生している。
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