研究課題/領域番号 |
20K13546
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
齋藤 英理子 (四谷) 帝京大学, 経済学部, 講師 (90803643)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 経済史 / イギリス / 福祉国家 / 社会保障 / 社会保険 / 医療 / イギリス史 |
研究実績の概要 |
イギリスの公的な医療保障は、20世紀初頭に成立した国民健康保険(NHI)制度から始まった。本研究の目的は、NHIの下で医療の現場がいかなる影響を受けたのかを考察することで、NHIの歴史的意義をより長期的な視点から明らかにすることにある。 当初の計画では、国内の図書館等で閲覧・収集可能なイギリス議会文書や議会議事録、新聞、医学雑誌等の検討に加えて、イギリス国立公文書館所蔵の未刊行史料の収集・分析を行う予定であったが、令和4(2022)年度も新型コロナウイルスの影響でイギリスでの史料調査を実施することはできなかった。 そのため本年度は前年度に引き続き、国内の図書館やオンラインで収集可能なイギリス議会文書(特に保健省関連の文書)や医師会雑誌、二次文献の分析を行うことで、NHIの一般開業医に対する影響について考察を進めた。これまでの研究では、一般開業医はNHIの下で収入が著しく増加するなど、その立場が大幅に向上したことが明らかにされてきた。しかしその一方で、一般開業医はNHIによって初めて国家の管理下に置かれることとなった。このことは、第二次世界大戦後にスタートした国民保健サービス(NHS)との連続性という観点からみて注目に値する。 また、NHIが寄付金や年会費を財源に貧困層の治療を行ってきた慈善施設である篤志病院(voluntary hospital)に与えた間接的な影響や一般開業医と篤志病院の相互関係の変化についても、主に医師会雑誌や二次文献の調査・分析によって可能な限り考察することに努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響で、研究期間の初年度からイギリス、ロンドンでの史料調査を実施することができておらず、二次文献や既に収集済みの史料を用いて研究を進めてきたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまで収集してきたイギリス議会文書や医学雑誌等の分析を引き続き進める。加えて、イギリスでの史料調査を実施し、未刊行史料の収集・分析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたイギリスでの史料調査を実施することができなかったため、次年度使用額が生じた。2023年度は、文献の購入費用や現地史料調査の費用として使用予定である。
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