研究課題/領域番号 |
20K13549
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研究機関 | 札幌大学 |
研究代表者 |
武田 佑太 札幌大学, 地域共創学群, 講師 (70848556)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フランス銀行 / 第三共和政 / 国家の介入 / 市場経済 / 農業融資 / 支店経営 / 直接割引 |
研究実績の概要 |
フランスにおける資料調査が依然として困難な状況のため、入手済みの一次資料及び刊行文献の再検討を行い、次の成果を得ることができた。 ①フランス銀行に関する制度的特質を検討について。創立期において既に、国家の介入が同行に及ぶ仕組みが法的に確立されていた。そして第三共和政期には、同行の総裁職に就任した共和主義者マニャンとパランの下で、この時期に急速に拡大されていった支店網の運営を含めた広範な権限が総裁府に委ねられることが、行内規定に依るのみならず、法的根拠を持つに至った。以上のプロセスより、19世紀における同行に関する諸制度が、国家の介入の強化という歴史的変化を示していることを明らかにした(「19世紀フランス銀行に関する法と行内規定の史的変遷―創立期における国家の介入の視点から―」『経済と経営』第52巻第1号、2022年3月)。 ②フランス銀行の農業融資への国家の介入の背景として、20世紀初頭に、労働・共済省内に周期的恐慌に起因する失業対策などを目的とした「失業委員会」が設立された事実を挙げることができる(2022年日本金融学会関西部会)。したがって、介入の一般的な傾向が定着していた可能性がある。介入の一つの明確な形としては、倉庫寄託物を根拠として同行における手形割引が可能となる倉庫証券に関して、1898年に「農業倉庫証券委員会」が設立され、フランス銀行総裁(共和主義者パラン)が名を連ねている事実を挙げることができる。当時数多く存在した同行の支店経営の比較と合わせて、これらについて国内外で学会報告を行った(2021年社会経済史学会全国大会、the 25th International Euro-Asia Research Conference、2021年経営史学会関西部会)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの世界的流行により、フランスへの渡航が依然として困難な状況にあった。既に入手済みの一次資料や刊行文献の分析により研究は継続し、学会発表や成果物の提示を行っているが、当該研究に関わるより詳細な実証作業を行うべく、現地における資料調査を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
2022年前半の時点においては、日本とフランスにおける新型コロナウイルスの感染状況が大きく改善していることから、年内に現地における長期の資料調査を行うことで、研究実施計画の未達成部分、つまりフランス銀行の基本方針、ボルドー支店を含めた農業地域に位置する同行支店の経営分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの世界的流行により、フランスへの渡航が困難となったため、日本国内の図書館に所蔵されている刊行文献や議会資料の調査・分析を行うことを目的とした出張を行った。2021年度における使用を予定していたフランス語論文校正費用については、既に補助金を使用した。 2022年度については、当該感染症の状況が改善しつつあることから、フランスにおける資料調査のための旅費、及び物品購入費の費目に準じて補助金の残額を使用していく。
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