本研究の目的は,経営者交代と事業再構築に関して,理論的・実証的に検討することにある.より具体的には,事業再構築として,戦略変更の側面や,新市場への参入と既存事業からの撤退の側面,事業再構築に伴う減損損失の計上など多様な側面に注目して研究を行っている. 今年度の実績は,主に以下の3点に整理出来る. 第1に,経営者が事業再構築などに与える影響に関して,コーポレート・ガバナンスの観点から理論的な検討を行った.この検討結果は,論文としてまとめ,査読付学術雑誌へ投稿しており,レフェリーからのコメントに対応して修正した原稿を再提出した段階にある. 第2に,上記のうち,新市場への参入について実証的に検討を行った.これは前年度にStrategic Management Societyの41th Annual Conferenceにて発表を行った研究を,そこで得たフィードバックをもとに,大幅に修正した研究である.これについては,同学会の今年度の大会で改めて発表を行った(Strategic Management Societyの42nd Annual Conference).そこで得られたコメントをもとに,フルペーパーとしてまとめあげており,国際査読付学術誌へ投稿する直前の段階にある. 第3に,事業再構築(新規事業立ち上げと,既存製品カテゴリーからの撤退)に関して,質問票調査のデータを用いた分析も行った.特に本分析では,そのそれぞれにおいて調整にかかる時間の割合を被説明変数として,どのような組織要因が影響を与えるのかを検討した.日本の大規模企業を対象とした全7回の質問票調査をもとに,例えば,個々人が計画に拘束されているほど,戦略などの情報が公式のルートで伝わっているほど,事業再構築にかかる調整労力は小さくなることを確認した.この研究成果は,書籍収録論文として公表予定である.
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