研究課題/領域番号 |
20K13556
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
牧野 恵美 広島大学, 学術・社会連携室, 准教授 (90706962)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 事業承継 / アトツギベンチャー / アントレプレナーシップ / 社会システム / 対話型組織開発 / アプリシアティブインクワイアリー / エフェクチュエーション / 事業創造 |
研究実績の概要 |
R3年度もコロナ禍で計画していた海外渡航やワークショップ開催が困難となり、研究計画を修正して研究を進めた。アトツギベンチャーは、様々なステークホルダーの利害を調整しながら、新規事業を手掛けなければならない。その合意形成を築くうえで、アトツギがエフェクチュエーション理論に基づき、思考・行動するのが効果的であるという仮説を立て、実際にアトツギベンチャーを手掛けている経営者に対するヒアリング調査などを実施した。また、アトツギベンチャーを支援する活動に着目し、アトツギ向けのイベントを観察した。 調査の結果、アトツギがエフェクチュアルに行動することは、ベンチャーの立ち上げには効果があることが確認できた。利害が異なるステークホルダーの合意形成にあたり、アトツギがエフェクチュアルに行動することは、一定の成果につながるものの、社員もエフェクチュアルな行動がとれるようになれば、ベンチャーが一段と拡大する可能性が高まる。そこで、アプリシアティブインクワイアリーのような肯定的な対話型組織開発アプローチを導入し、社員が起業家的な行動をしやすくなるかどうかを今後、検討していく。 理論構築のための研究交流がコロナ禍で制限されたため、日本の経営者に対してエフェクチュエーション理論の普及・啓蒙活動を実施した。日本で初めてエフェクチュエーションに関する国際会議を企画・実施。対面・オンラインのハイブリッド形式で開催したため、国内外の多くの実務家が参加し、エフェクチュエーションへの理解を深めた。このような啓蒙活動を実施することで、研究などで企業と連携しやすくなることを期待している。 R2年度に発表した著作Innovation Makersの日本語訳に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍で海外渡航ができず、研究交流が滞った。また、ブロックを使ったワークショップもコロナ禍で実施が困難なため、計画に掲げているファミリービジネスを対象とした実践的なワークが、いまだに実施できないでいる。
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今後の研究の推進方策 |
R3年度にヒアリングを実施したアトツギベンチャーで、ブロックを使ったワークショップを実施する。このようなワークショップが、なぜ、アトツギベンチャーの育成に貢献するかの理論的な検討を進め、概念的モデルの確立を目指す。形のあるものをつくる、という行為が、利害関係者間のコミュニケーションを促し、それがエフェクチュアルな行動をいかに促進するかを、ワークショップで得られた知見を基に検討する。 R2年度に発表した著作Innovation Makersの日本語訳を完成させ、出版を目指す。 海外渡航ができる環境であれば、社会システム論と対話型組織開発の海外研究者と研究交流をし、検討している概念的モデルを精査する。萌芽的な研究のため、オンラインでの研究交流には限界がある。集中的に対面で議論できるような機会をつくれるよう工夫していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で予定していた海外渡航ができず、旅費を使わなかった。またコロナ禍でブロックを使用したワークショップも実施できず、ファシリテーターなどに使用する人件費を支出しなかった。次年度は、研究交流のための海外渡航と、ワークショップを実施する予定。
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