研究課題/領域番号 |
20K13557
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
内田 大輔 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (10754806)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | コーポレート・ガバナンス / 株主 / 取締役選任 / 制度変容 |
研究実績の概要 |
本研究は、株主を取り巻く制度環境が変容する中、株主の企業に対する働きかけがどのように変化するかを解明することにその目的がある。コーポレート・ガバナンス研究において、所有者である株主が企業行動に与える影響は中心的な課題の一つであり、これまで国内外において様々な研究が蓄積されてきた。それら既存研究の多くでは、しばしば一括りにまとめられてきた株主はそれぞれ、異なる選好を有しており、異なる行動を企業に求めて働きかけることを明らかにしてきた。しかしながら、そのような株主による異質的な働きかけが、経時的にどのように変化するかに関する研究は相対的に少なく、さらなる知見の蓄積が必要とされている。このような既存研究の間隙を埋めるべく企図される本研究では具体的に、スチュワードシップ・コードの導入という、日本のコーポレート・ガバナンスにおいて近年最も関心を集める制度環境の変容の一つに注目することで、どのように制度環境の変容が株主による企業への働きかけに変化をもたらすかを解明し、コーポレート・ガバナンス研究に貢献することを目指す。 研究実施の1年目となる2020年度は、実証研究の基礎となる大規模データベースの構築に注力した。具体的には、日本の主要上場企業500社(TOPIX500の構成銘柄に選出されている企業)における2013年から2017年における取締役選任議案への議決権行使結果に関するデータ収集作業を推進した。2013年は日本においてスチュワードシップ・コードが導入された2014年の前年にあたり、2017年は2014年に導入されたスチュワードシップ・コードが改訂された年にあたる。このように、「企業-取締役-年度」というマルチレベルから構成されるデータセットを用いて、制度環境の変容が株主の取締役選任議案への議決権行使に与える影響に関する理論的・実証的研究を推進することを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施の1年目となる2020年度は、当初の計画通り、大規模データセットの構築をおおむね完了させることができた。その結果、日本の主要上場企業500社における2013年から2017年における取締役選任議案への議決権行使結果の大規模パネルデータを構築することができた。ただし、一部のデータの収集作業がまだ完了していないため、次年度においても、追加的にデータ収集作業を行っていく予定である。 加えて、先行研究の文献サーベイに基づく研究課題の導出と作業仮説の構築・深化も推進した。その結果、本研究において注目すべき3つの研究領域を特定することができた。具体的には、株主の異質性に注目した一連の研究、国内外におけるコーポレート・ガバナンスの制度環境の変容に注目した一連の研究、取締役選任議案への議決権行使に注目した一連の研究、の3つの領域である。 以上の理由より、本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究実施の2年目となる2021年度においては、主に、追加的なデータ収集作業を推進すると同時に、構築したデータセットに基づいて、制度環境の変容が株主による企業への働きかけに与える影響に関して統計分析を行い、暫定的な知見を獲得することを目指す。統計分析に加えて、先行研究の文献サーベイで特定された研究領域を念頭に、理論枠組みを構築し、学術的意義のある知見を見出す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、コロナ渦で当初計画していた学会への参加や研究打ち合わせが中止・オンライン化し、旅費としての支出が減少したためである。加えて、キャンパスでの作業に制約が生じ、当初計画していた研究補助者への謝金としての支出も減少している。今後、商用データベースの購入によるデータ補完作業などを通じて作業時間の短縮を試み、2021年度中には正常化する計画である。
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