1つ目に、本研究課題の鍵概念である文化的知性についてのシステマティックレビューを行った。前年度に行った共引用分析では最新の研究動向を把握することが難しかったことから、書誌結合分析を実施した。具体的には、Web of Seienceで入手した書誌情報(引用文献リストの情報)を用いて実施した。その結果、最新の研究においては、定量的な手法によりイノベーションやコミュニケーションといった幅広いテーマで、文化的知性との関係を捉えようとするものが多いことがわかった。これらを統合して検討したところ、文化的知性を先行要因としてみる研究と成果要因として捉える研究に分けることができた。さらに、いくつかのテーマで文化的知性の研究が十分に行われていないことを特定することができた。また、文献レビューを行ったことにより、文化的知性の研究において立脚することの多い理論や概念を把握することができた。 2つ目に、文化的知性に関するアンケート調査を実施し、企業における意思決定者の文化的知性の水準や他の要因に関するデータを入手することができた。このデータを用いて、文化的知性と企業の国際化の関係に関する分析を実施した。その結果、直接的な影響については確認することができなかったが、いくつかの要素を媒介して有意な影響を及ぼすことを確認することができた。ここから、文化的知性について検討する際には、媒介要因や調整要因を検討することの重要性が示唆されたのである。
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