研究課題/領域番号 |
20K13562
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研究機関 | 東洋学園大学 |
研究代表者 |
木川 大輔 東洋学園大学, 現代経営学部, 准教授 (10824980)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プラットフォーム / エコシステム / ソーシャルメディア |
研究実績の概要 |
研究期間の2年目にあたる本年度は、ソーシャルメディア型のプラットフォーム・エコシステムの衰退事例を複数収集し、事例研究を行うとともに、それらを読み解く理論的枠組の検討を行った。昨年度も報告したとおり、今年度は、「衰退そのもの」に注目するのではなく、エコシステムの成長の停滞や成熟してからの再拡大など、対象となる現象面を幅を広げて分析することで、当初の目的である「エコシステムのコア企業に求められるマネジメント」について、より幅広い観点から理解を深めることを心がけた。 具体的には、1)昨年度に事例調査・データ収集を開始した企業の追加の調査やインタビュー、2)後発企業にアクティブユーザーを奪われて業績が悪化している企業のデータ収集および後発企業へのインタビュー調査、3)各事例を統合的に分析する枠組みを構築する為の文献サーベイ、の3点を中心に取り組んだ。 これらの取り組みのうち、1)および3)は論文執筆が完了し学術誌に投稿中、2)は学会発表および論文執筆が完了し学術誌に採択済み(但し、本報告書作成段階では未刊行)のステータスである(いずれも2021年度3月末時点)。 最終年度にあたる2022年度は、個別の研究成果を学術誌に掲載させることを目指すとともに、個々の事例を貫く統合的な論理のブラッシュアップを行い、個々の現象を読み解いた先に到達できる理論的貢献がより良いものになるよう検討を深めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進捗は、「遅れている」と「おおむね順調」という2通りの見方がある。 当初の予定では、20件前後の定性的な事例を収集し、それをQCA(Qualitative Comparative Analysis)を用いて分析する計画であった。しかし、複数事例の比較に際して、焦点を当てる変数以外の条件を統制することが強く求められるようになってきた事情を考慮に入れると、同一業界で20件前後のプラットフォーム・エコシステムの衰退事例が見当たらないという事情や、コロナ禍での行動制限により、新たなリサーチサイトの開拓が困難という事情が存在している。そのため、遅れているという見方をすることができる。 もっとも、上記は2020年度終了時点において既に明らかになっていたため、2021年度は研究の方向性を軌道修正した。すなわち、複数事例を集めてQCAを用いて分析する計画から、単一事例をより深く調査・収集し、コンテクストを揃えながらその背後に存在するメカニズムを分析するという方針である。それゆえ、明らかにしたい問いに対する近接度や成果物の件数としてはほぼ計画通りに推移している。 学術研究においては、当初想定していないことが発生するのが当然であるため、計画そのものに固執するよりも、現実の状況に適応しながらその時点での最適なアプローチを行うことが相応しいと考える。この立場に基づき、おおむね順調と結論づける。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は研究計画の最終年度に位置づけられる。初年度(2020年度)から次年度(2021年度)にかけては研究のアプローチを大きく変更する必要があったが、2022年度は2021年度と同じ方向で研究を継続する。最終年度を迎えるにあたり、新たなデータや事例を収集するというよりは、収集済みの事例とこれまでに蓄積した文献サーベイを踏まえ、個別事例を表面的に解釈したのみでは見落としてしまいそうな、各事例に共通するメカニズムを発見することを目指す。 また、研究成果を社会に還元する上で、少しでも読者の多い学術誌に掲載されることを目指し、精力的に研究を続けていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定していた米国出張が入国制限のために行えなかったこと、および国内出張もまん延防止等措置の事情により制限がかかっていたため。次年度は、上記理由のために実施ができなかった出張による情報収集やリサーチサイトの開拓、収集済み事例の裏付け調査などを行いたいため、「次年度使用額」が必要になると想定している。
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