研究課題/領域番号 |
20K13573
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研究機関 | 京都橘大学 |
研究代表者 |
下門 直人 京都橘大学, 経営学部, 専任講師 (00844094)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 協同組合 / 多国籍企業 / サプライチェーン / 酪農業 / インド |
研究実績の概要 |
本研究は、農村の貧困問題の改善など、インドが抱える社会的課題に対し事業を通じて解決を図ろうとしている協同組合や民間企業を対象とし、それぞれの組織がいかにして社会的目的の実現と経営成果の両立を図ろうとしているのかを明らかにすることを目的としている。具体的には、酪農業及びその製品である牛乳・乳製品の流通・消費に至るサプライチェーン全体を対象として組織間の比較分析を進めてきた。 令和4年度の主な成果は、以下2本の公表論文を執筆したことである。①「インドの牛乳・乳製品市場を巡る競争と酪農業協同組合」(『アジア経営研究』28巻、pp.53-68、査読付き)、②「インドにおける酪農業協同組合と台頭するミルク生産者企業」(『経済論叢』196巻、pp.133-148)。 まず、論文①は、インドの牛乳・乳製品市場を巡る競争の実態について明らかにしている。具体的には、インドは経済の自由化の進展とともに酪農業協同組合と民間企業とが厳しい競争を展開している指摘されるが、実際には飲用牛乳を中心に酪農業協同組合間の競争となっていることを示した。次に、論文②は、インドの酪農業を支える生産者組織として近年台頭しつつあるミルク生産者企業と長い歴史をもつ酪農業協同組合を対象とし、以下の二つの課題を明らかにした。すなわち、一つは、ミルク生産者企業の組織的な特徴や実態を明らかにしたことであり、もう一つは、ミルク生産者企業と酪農業協同組合の共通点と相違点を示しつつ、インドの酪農業における両者の位置づけを理論的に示したことである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルスの影響により、令和4年度の前半はインドでの現地調査は実現しなかったが、インドや日本での海外渡航の規制が緩和されため令和5年3月にインドのパンジャーブ州において農村調査を実現することができた。 現地調査ができなかった期間については、インド酪農庁(NDDB)が発行しているデータ・資料等を用いて、酪農業協同組合の補完的な組織として台頭しつつあるミルク生産者企業を新たに分析対象に加え、酪農業協同組合及び民間乳業メーカー、ミルク生産者企業の3者の比較分析を行った。また、令和5年3月に実施した現地調査では、これまでグジャラート州及びビハール州で実施してきた調査と同様に、パンジャーブ州の農村酪農協の生乳集荷所及び牛乳・乳製品の加工工場の見学・調査を実現することができた。このパンジャーブ州での調査を踏まえ、今後はグジャラート州及びビハール州、パンジャーブ州の酪農業協同組合の比較分析を進め、その成果を学会報告や論文というかたちで公表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年3月に実施した現地調査では、新たにパンジャーブ州の農村酪農業ならびにルディアナ県酪連の工場調査を実現させることができた。そのため今後は、パンジャーブ州の酪農業協同組合の実態の分析を進めつつ、これまでの研究成果としてまとめてきたグジャラート州及びビハール州の酪農業協同組合との比較分析を進める計画である。その過程において不足する資料やデータ等がある場合は、2023年の夏に追加調査を実施することを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大により、令和2年度及び3年度において計画されていたインドでの現地調査を実施することができなかったため次年度使用額が生じた。ただ、令和4年度においては海外渡航に関する規制が緩和された影響でこれまで実現できなかった現地調査を実施することができた。そのため令和5年度においては当初の研究計画に基づいて主にインドでの調査を実施するために使用する計画である。
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