研究課題/領域番号 |
20K13580
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研究機関 | 京都橘大学 |
研究代表者 |
仙波 亮一 京都橘大学, 経営学部, 准教授 (70823938)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アンガーマネジメントプログラム / 非建設的行動 / 組織機能阻害行動 |
研究実績の概要 |
本研究では、アンガーマネジメント(以下AM)が組織における労働者の非建設的行動について、どのような影響があるのかを検討することを目的とした。本研究では、非建設的行動を対人関係からの撤退と攻撃的行動と捉え、前者は人づきあい尺度、後者は組織機能阻害行動尺度を用いて、労働者92名に対し、AM受講前後にアンケート調査を実施した。 AMは3回構成であり、1回につき90分の講義と30分のワーク(個人が課題に取り組み、その結果をグループでシェアする)から成る。1回目は「衝動のコントロール」(反射的行動の抑制、怒りの点数化、落ち着く言葉)、2回目は、「思考のコントロール」(コアビリーフの自覚、出来事への意味づけの見直し、許容範囲の拡大・固定・伝達)、3回目は「行動のコントロール」(自分軸での制御可能性・重要性の判断)を扱った。 分析には、ウィルコクソンの符号化検定を用いて、非建設的行動の尺度得点をAM受講前後で比較し(分析1)、さらに、性別、年齢別に分けて同様の分析を行った(分析2)。 分析1の結果、人づきあい尺度得点では有意な変化は見られなかったが、組織機能阻害行動尺度得点については、「他者への批判」のみ有意に低下した。分析2の結果、人づきあい尺度得点では有意な変化が見られなかったが、組織機能阻害行動尺度得点については、「他者への批判」のみ、女性及び46歳未満の労働者が有意に低下した。これらの結果から、本研究では、AMの受講が女性と46歳未満の労働者の「他者への批判」を制御する効果があることが示唆された。AMが労働者に与える影響を明らかにしたことで、日本の経営組織において、より戦略的にAMを活用した人材育成が可能となることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初2020年6月から9月において、アンガーマネジメント研修を実施する予定であったが、 コロナ感染症拡大の恐れがあったため、研修の開催を見合わせた。その後、コロナ感染の終息を待ったが、見通しがたたず、当初の予定よりも大幅に研修の実施を余儀なくされた。その後、2021年6月~11月にアンガーマネジメント研修を実施し、調査1「アンガーマネジメントプログラムが非建設的行動に及ぼす影響の量的検討」を実施した。また、調査2「実践場面におけるアンガーマネジメントプログラムの有効性の質的検討」のインタビュー調査を終了し、現在分析中である。
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今後の研究の推進方策 |
調査1は、2022年10月に開催される8th Singapore International Conference on Management, Business, Economic and Social Science において、研究発表を予定している。また、調査2は、逐語分析を行い、その結果について、2022年9月に日本グループ・ダイナミックス学会、11月に日本キャリア・カウンセリング学会全国大会にて報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、当初予定した時期にコロナ感染拡大が危ぶまれたため、アンガーマネジメント研修が実施できなかった。そのため、研究が予定よりも大幅に遅れてしまったからである。 次年度において、以下の使用が見込まれる。①研究結果を分析、考察する際の書籍・論文代金、②情報収集のための学会参加費用、③国際学会での発表資料の作成における翻訳代金、④量的分析の統計指導代金等
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