研究課題/領域番号 |
20K13582
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研究機関 | 大阪経済法科大学 |
研究代表者 |
氏田 壮一郎 大阪経済法科大学, 経営学部, 准教授 (30599402)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 製品開発 / ものづくり / 比喩 / 暗黙知 / 形式知 |
研究実績の概要 |
本研究は、感性消費型製品の設計・開発における便益開発の冗長的な側面をどのように軽減させるかといった問いを中心にしている。当年は、これまで収集した企業の情報を整理しつつ議論や考察を加えた。特に、開発時に目標となる感覚の共有手段として利用される場合が多い比喩について焦点をあて分析を行った。その結果、以下の成果を得ることができた。また現時点で得られた成果については、その内容をいくつかの論文にて公開している。 この製品開発における比喩は、感覚を例示するものであり、整理すると具体性やその対象などの観点から多様なものが存在することが分かった。例えばカニカマの開発で「カニの味」を目指すとなれば、目標の具体性は高いものとなる。このような特定の物を指すような比喩から、「自社の音」や「プロの技」といった抽象的つまり個別の主観によって解釈が異なるようなものまで存在した。しかし抽象度が高い比喩が利用される場合、社内ですでに感覚が共有されている場合が多い。そのような状況でない場合、その解釈に担当者ごとの解釈のゆれを生じさせる可能性がある。また試行錯誤が増加し、作業工程に冗長性が生まれる。それに対して、具体性が高いということは、暗黙知のわかりにくさが喪失することや、そのまま表現するべきなどの解釈の硬直化を生じさせる可能性があるが、一方で試行錯誤を軽減し工程の冗長性が減少する可能性がある。このように開発における比喩というものは、比喩となる対象物の選択もまた商業的な成功を実現するうえで、重要な要素となることが判明した。 さらに比喩と開発には、多様な状況の組み合わせを想定することができ、整理の必要がある。今後の研究の方向として、比喩という新しい展開を誘発できる可能性があり、実務的にも開発の効率性向上を期待できる比喩の利用や設定の手法が存在する可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで、すでにいくつかの企業への一次調査を完了している。このような感性消費型製品の開発では、プロトタイプの試行錯誤を繰り返すことが重要であり、その際に評価を行い試作が生み出す感覚を調整することで開発が進捗する場合が多い。本年度は、このプロトタイプ評価の過程において、評価の基準となる“比喩”がどのような役割を果たし開発となる感覚が共有されるかについて、定性的にアプローチし、いくつかの考察を得ることができた。しかしながら現状では、概念化するためにはまだ事例が少ない状態で、さらに並行して先行文献の整理も行う必要があり、これら作業を継続的に行う予定としている。これについては翌年度に作業を持ち越すことにしている。
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今後の研究の推進方策 |
収集した資料やデータをもとに、比喩の利用が開発や組織へどのような影響を与えるかを分析する。比喩の具体性などの分類と、分類に基づいた効率や組織の特徴の整理といった作業を行う。本年度は、この作業を実施しつつ、以下の3項目から定性的な分析を実施する。 ① 比喩の特性: 比喩の具体性、比喩と製品・機能の対比関係などについて分析する。 ② 比喩の解釈:既知で良く認知された物を比喩とするのではなく、実在しないまたは未知のものを比喩とした場合、解釈が必要となる。この比喩の解釈は、意味的と設計的な解釈に分類できる。設計的な解釈とは、例示をそのまま設計に定着できるもので、それに対して意味的な解釈はまず定義づけから開始する必要がある。 ③ 比喩と組織能力:比喩の具体性は組織の熟練度に応じ変化するか。その反対も存在するかについて分析を行う。組織的に感覚の共有が実現できている場合、抽象的な比喩でも解釈という過程が少ない状態でも開発は可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、交付初年度から数年間、取材できなかった企業などがあり、その分、交通費や資料などで翌年度に使用額が生じる結果となった。本年度は、この取材を実施する予定にしている。
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