研究課題/領域番号 |
20K13587
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
大神 正道 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 講師 (90581603)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 技術進化 / 技術認識 / 技術マネジメント / 技術の併存期 / IPO / スタートアップ |
研究実績の概要 |
2021年度は、まず、前年度から行っていた技術の併存期に関するHowells(2002)の「帆船効果」や、Snow(2004)の「最後のあがき」、Raffaelli (2019)の「技術の再興」といった鍵概念の検討のデータの整理等を進めた。今後、操作化などの可能性を検討し、研究の将来性について明らかにする予定である。 同時に、ベンチャー企業が活性化するとさまざまな技術が発展するようになり、複数の企業による技術が併存することが少なくないことから、新たな研究に取り組んだ。東北大学の一小路武安氏、東洋大学の中野剛治氏との共同研究を行い、ベンチャー企業の活性化のための環境要因について明らかにすることにしたのである。当該研究では、スタートアップ企業に焦点を当て、マクロ環境がIPOまでに至る時間に与える影響を検討している。その際に、特に本年度はIPO企業についてのデータベースを構築している。構築中のデータベースを基に、対象市場、対象企業の特性(起業タイプ)、実質的な創業タイミング といった変数を考慮した分析を行った。結果として、経済的に良い環境にあればあるほど上場が遅くなるという逆転効果がみられた。これは、様子見をしていたスタートアップが景気が良くなることによってIPOを実現できるようになったからだといえる。つまり、パフォーマンス指標としてIPOまでの時間をそのまま単純に用いることには疑問がある。このように技術が併存する状態がどのように実現されるのかというのは簡単に測ることはできないのである。 以上の分析結果はABAS Conference(2021年11月15日、2022年1月17日)で2回発表し、プレプリントを発表した(一小路・中野・大神, 2022)。プレプリントの内容は論文として整理されており、次年度の早期の段階にて公刊される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
若干の遅れが生じていると考えざるを得ない。本年度は新たなデータベースの構築に取り組むなど、コロナ禍においても研究を進められる体制を作り上げることはできた。しかしながら、データベースの構築にエフォートを取られたため、分析をするのが遅れてしまった。加えて、ポストコロナを見据えて予定していた事例研究が十分に行うことができず、追加調査を行うことができなかったからである。次年度には改めて追加調査の実現を検討していく。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、構築したデータベースを基に分析した結果を論文化すると同時に、新たな分析に取り組む予定である。加えて、追加的なインタビュー調査を通じて事例作成と分析を進めて論文化することとする。ただし、インタビューの実施が困難だった場合には有価証券報告書をはじめとした公刊データを中心に分析を進めることで、比較事例分析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新たなデータベースの構築に取り組むことで新たなデータベースの購入等を行わなかった。加えて、ポストコロナを見据えて予定していた事例研究が十分に行うことができず、追加調査を行うことができなかった。次年度には改めてデータベースの購入や追加調査の実現や学会出席のために使用する予定である。
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