研究課題/領域番号 |
20K13594
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
寺本 直城 拓殖大学, 商学部, 准教授 (10755953)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 経営組織論 / 情報セキュリティ / CSIRT / 実践 / 高信頼性組織化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,日本企業における情報セキュリティ組織の在り方,とりわけ継承プロセスを経営組織論の観点から明らかにすることである.様々な経営組織で情報セキュリティに関する事故や不正・不祥事(以下,サイバーインシデント)が発生している.2020年度,2021年度においても,新型コロナウィルス蔓延に伴う遠隔業務の拡大や,諸外国の政治・外向動向に伴うサイバー空間での不穏な動きの加速から,あらゆる経営組織において情報セキュリティの重要性はますます増しているといえる.その中で,経営組織内にCSIRTを設立する企業や組織が増えつつあるものの,その継続的運営や存続が困難なものも出てきている.以上のような背景から,本研究では,日本企業において持続可能な情報セキュリティのあり方を模索する. 2021年度は当初の研究目的に従い,実践論に基ずく組織分析の在り方についての研究をすすめた.具体的には以下の通りである. (1)実践論的な組織分析の研究:2020年度に行った文献レビューや理論的研究を元に実践論的な組織論あるいは人的資源管理論の在り方について考察した. (2)最近の情報セキュリティのあり方のレビュー:2020年のその前後から,企業の情報セキュリティのあり方が変化しつつある.これは,ただ単なる技術的な問題だけでなく,情報セキュリティの考え方・思想の変化でもある.これについて情報収集を行った. (3)成果の捻出:以上の2点について,その関連分野の研究成果について,2021年度は2冊の研究書に寄稿し,研究成果を社会に発信した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は現状,「おおむね順調に進展している」と考えられる.この区分の評価については,当初設定していた研究計画をおおむね実施,完了できたことおよび,関連分野.キーワードについての研究成果を一部出版できたことを根拠としている.2020年度におこなった文献研究・資料蒐集を元に,2021年度に予定されていた実践ベースによる組織分析については,概ね行うことができた.他方で,長引く新型コロナウィルス蔓延の影響から,実際に研究対象への観察やインタビューを行うことができておらず,それについては2022年度に行う必要がある.これらは,日本企業の情報セキュリティ体制の継承プロセスの確立を2022年度に行うための基盤となるため,早急な対応が必要である.現状では,申請書記載の重大な問題が発生した場合の「現在保持しているデータの活用」や「オープンになっているケースケースの分析」によって研究を進展させている状況にあるため,致命的な問題にはなってはいないものの,最新のデータや国際的な研究成果・知見があれば,より社会的要請に適合した形で本研究を完成させられることが考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
2020年,2021年の2年間で,企業を取り巻く情報セキュリティのあり方自体が本申請書を執筆した段階からさらに変化しつつある.本研究課題を推進していくうえでも,この変化を捉えた分析が必要となってくる. 2022年度は,実際に情報セキュリティ体制の継承プロセスの在り方についての分析・考察を進めていく.これには,2020年度に行った理論的研究や蒐集した文献,2021年度に行った実践論的な組織経営や人的資源管理の在り方についての考察を元に進める予定である.また,それだけでなく,上述の時代,考え方の変化を捉え,それも加味した研究を進めていく予定である. そのために,第1に実際に日本企業の情報セキュリティ対応組織・チームへのインタビューや観察を進め,それを分析する.第2に,国際的な情報セキュリティ組織の動向の調査,分析を行う.第3に,それら研究活動を通して得られた成果は,随時,国内外の学術雑誌への投稿や学術会議への参加,書籍の出版などを通して積極的に発信していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,主に2つある.第1に,新型コロナウィルスの蔓延により学術会議が延期・中止,あるいはオンライン化したことによって旅費が発生しなかったためである.第2に,一部資料の支出については所属研究機関の研究費を利用したためである.2022年度は,基本的には当初の計画通り支出する予定である.しかしながら,追加的に発生しうる必要文献等の資料収集としてや,2020・2021年度に延期・中止された学術会議への参加費用に次年度使用額を充てる予定 である.
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