研究課題/領域番号 |
20K13603
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研究機関 | 中京学院大学 |
研究代表者 |
古田 成志 中京学院大学, 経営学部, 准教授 (60706729)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 組織変革 / ラディカルな組織変革 / 計画的変革 / 創発的変革 / テキストマイニング / 有価証券報告書 |
研究実績の概要 |
本研究は、ラディカルな組織変革論において有力な議論とされている計画的、創発的な組織変革を統合した仕組みを検討、構築することを目的としている。令和2年度は計画的、創発的変革の視点を統合した組織変革を遂行する日本企業の特徴を、テキストマイニングによる分析を用いて導出することを主たる研究目的として設定した。同時に、計画的、創発的変革を統合させるための議論を精緻化するために、両者を統合する視点の文献研究も実施した。 ラディカルな組織変革は多義的であるが、令和2年度の研究ではマトリックス組織の導入を計画的変革として捉えた。そして、マトリックス組織を導入している企業の有価証券報告書に記載されている文章から創発的変革の特徴を明らかにするためにテキストマイニングを用いて分析した。マトリックス組織を導入する前年に組織要素を「強化」すると同時に、「成長」や「拡大」という単語を用いていた。この点から、既存体制の強化と新規の模索を両立させるために、マトリックス組織を導入する傾向にあることが明らかになった。しかし、比較分析や経時的な分析を通じて、計画的、創発的変革を統合した特徴を明らかにすることができなかった。 ラディカルな組織変革を遂行する日本企業の特徴をより明確にするために、計画的、創発的変革を統合した視点に関する文献レビューも本年度に実施した。特徴が相対する計画的、創発的変革を結びつける視点の一つにパラドックスが挙げられる。パラドックスは相互依存する要素間の持続的な矛盾と位置づけられる。近年のラディカルな組織変革研究では、パラドックスを取り入れる視点が重要であるとみなされている。具体的には、組織学習における探索と活用を同時に追求すること、パラドックスにより生じる緊張関係のプロセスの研究が挙げられる。パラドックスによるラディカルな組織変革研究を整理した議論を学内紀要に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績でも述べたように、組織構造を計画的に変革するという視点でマトリックス組織の導入をラディカルな組織変革と捉え、テキストマイニングによる分析から創発的変革を捉えようとした。既存体制の強化と新規の模索を両立させることを確認することができた点で一定の成果をあげることはできた。しかし、比較分析や経時的な分析を実施できなかったため、創発的変革の詳細を検討するまでに至らなかった。したがって、「やや遅れている」と評価せざるをえない。
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今後の研究の推進方策 |
テキストマイニングによる研究実績は十分でないため、比較分析や経時的な分析を通じて計画的、創発的変革を統合した特徴を導出する必要がある。また、令和2年度はマトリックス組織を導入することに焦点を当てたが、他の事例でも模索していきたい。そして、導出した特徴を踏まえて事例研究の対象先を選定する必要がある。コロナ禍の中であるため、テキストデータを中心に行うことなど、代替案も含めて検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度の計画ではテキストマイニングを実施するための費用に加え、文献資料の複写費や印刷費を計上していた。しかし、研究室内の既存物品で賄うことができたため次年度使用額(8,000円)が生じた。 令和3年度内にトナーなど研究室内の印刷にかかる物品を使い切ることが想定されるため、次年度使用額は複写費や印刷費として使用する計画である。
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