研究課題/領域番号 |
20K13604
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研究機関 | 東海学園大学 |
研究代表者 |
丸山 一芳 東海学園大学, 経営学部, 准教授 (30508320)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 知識創造 / 知識移転 / イノベーション / 伝統産業 / 伝統的工芸品 / 地域企業 / オープンファクトリー / オープンハウス |
研究実績の概要 |
本研究は、伝統産業などの産地における地域イノベーションについて、知識を鍵概念とした理論的モデルを構築することを目的としている。また、鍵となる人材やチームに着目して地域イノベーションが展開される知識創造プロセスの詳細を描き出し、経験的な証拠とすることも目的である。 対象は、伝統的工芸品に関する産業だけでなく、日本酒などのいわゆる伝統産業も含んでいる。特に、オープンファクトリーと呼ばれる全国20か所以上の産地で開催されている地域イノベーションシステムを対象とした比較事例分析が特色となる。 コロナ禍の影響があり、リサーチサイトとして予定していたオープンファクトリーイベントが中止になりオンライン開催になるなど計画策定時に予想できなかった変化もあった。しかし、リサーチサイトが環境変化にどのように対応しながらイノベーションを生み出していくのかという新しい現象に関するデータ収集が可能になったことも伝統産地における地域イノベーションに関する理論的モデル構築に寄与できると考えている。 2020年度は本研究のための文献取集、文献研究を実施して周辺の議論との位置づけを明確化し、理論的な貢献について精査した。さらに、福井県鯖江市における「RENEW」というオープンファクトリーイベントでのフィールドワークやディレクターならびに実行委員長への現地インタビュー調査を実施した。 そのデータをもとした議論を日本創造学会第42回研究大会において発表した。ほかにも京都市の「DESIGN WEEK KYOTO」という工芸や中小企業のオープンハウスイベントにおいてもフィールドワークを実施してデータを取得した。また、名古屋市の酒蔵である萬乗醸造による日本とフランスにおける日本酒とワインの知識移転による醸造のイノベーションプロセスについても考察し、著書の分担執筆として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、2020年度の前半に日本酒における地域イノベーションを考察・発表し、ほかに伝統産地を革新する場であるオープンファクトリーイベントについて新潟県燕三条地域における「工場の祭典」、福井県鯖江市を中心とした地域での「RENEW」、京都市の「DESIGN WEEK KYOTO」 、台東区浅草の「浅草エーラウンド」などの関係者へのインタビュー調査、イベントでのフィールドワークを予定していた。 しかし、コロナ禍による緊急事態宣言があり対面でのインタビュー調査はその多くをキャンセルした。また、イベントそのものが中止になったり、オンライン開催となったりするなどリサーチサイトにおける急激な変化もあった。しかし、「RENEW」ならびに「DESIGN WEEK KYOTO」はリアル開催がなされたため調査を実施できた。また、「工場の祭典」などはオンライン形式での開催となることで運営組織や参加企業に新しい変化が生まれたことを観察できた。 これらのデータ収集・分析から一件の学会報告と学術書の一章を分担執筆して発表することはできた。インタビュー調査については多少の遅れが生じたため方法をオンラインなどに切り替えて今後は実施し、遅れを取り戻していく。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、昨年度に実施した福井県のオープンファクトリーイベント「RENEW」での調査データの精査と分析を実施し、追加データを取得する。そして、このデータをもとにした論文を執筆する。 さらに、昨年度リアルな形式では開催されなかった新潟県燕三条地域におけるオープンファクトリーイベント「工場の祭典」について、多くの動画を用いた施策に大きくシフトした経緯や困難、キーパーソンの行動などについて調査を実施する。そのことを通じて、オープンファクトリーのデジタルトランスフォーメーション(DX)について追加調査事項とし、伝統産地のイノベーションシステムや場としてのオープンファクトリーが進化するプロセスや、産地の中小企業のDXを誘発するプロセスなどについて明らかとする。 さらに、近畿圏でのオープンファクトリーイベントが東日本地域の取り組みに影響を受けて活発化している。このように産地と産地がオープンファクトリーという共通のイノベーションシステムを採用することで影響しあうプロセスについても八尾市、堺市、門真市、東大阪市で開催される「FactorISM」や八尾市の「みせるばやお」、「DESIGN WEEK KYOTO」のチームが仕掛ける「DESIGN WEEK TANGO」の調査を通じて明らかとする。そのためのデータを2021年度は収集する。 このように、近畿圏の取り組みや近畿圏での伝播について知識創造プロセスととらえて事例分析を実施し、2021年度中に学会発表にて議論し、2022年度には論文にしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた新潟県燕市、三条市、台東区浅草などの現地調査やインタビュー調査が、コロナ禍の影響で中止となったために、旅費として想定していた経費が余ることとなったために次年度使用額が生じた。 2021年度はコロナ禍に対応して研究計画・研究方法を若干変更する。この次年度使用額を使用して遠隔でのインタビュー調査や取得データ分析が可能になるように設備を整え、サービスを利用する予定である。
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