研究課題/領域番号 |
20K13607
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研究機関 | 流通科学大学 |
研究代表者 |
柿沼 英樹 流通科学大学, 商学部, 准教授 (00780529)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | タレントマネジメント / 戦略的人的資源管理 / 日本型人事管理 / 計量書誌学的分析 |
研究実績の概要 |
2020年度は、次年度以降の調査に向けた概念的検討として、以下の2つを実施した。 第1に、日本型人事システムの変容と展望に関する研究群の把握と整理のために、特に「働き方改革」と「ジョブ型雇用」に焦点を当てた文献渉猟を行った。両者の議論に共通しているのは、多様な働き方を受け入れうる新たな人事システムのかたちを模索する必要があるという点であった。また、ジョブ型雇用に関する議論では、タレントマネジメント(TM)に関する取り組みの一側面としてジョブ型雇用への移行が取り上げられる場合もあることが確認された。それらの議論をもとに、日本企業とTMとの接合、換言すれば日本型人事システムの新たなかたちとしてのTMの可能性について、概略的にではあるが検討を進めることができた。 第2に、人的資源管理論を主要テーマとする主要な国際学術誌4誌 (International Journal of Human Resource Management, Human Resource Management, Human Resource Management Journal, Human Resource Management Review) の2000年以降の掲載論文4,055編を対象とした計量書誌学的分析を通して、人的資源管理(HRM)研究のなかでのTMの立ち位置を検討した。具体的には、論文に付された著者キーワードの共起分析と、引用・被引用関係のネットワーク分析を行い、TM研究の論文群がどういった文脈のなかに付置されるのかを確認した。その結果、「戦略-人事管理-業績」のつながりを問う戦略的人的資源管理(SHRM)の文脈のなかでも、特に従業員の細分化(segmentation)を重視する議論の系譜に位置づけられることが明らかとなった。さらに、この分析を出発点として、TMとSHRM(あるいはHRM)の概念的異同についても検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属機関変更やコロナ禍による影響をある程度見越した研究計画としていたが、予算執行や調査実施に若干の計画違いが生じている。ただし、研究計画全体を大幅に見直すレベルのズレではなく、今後の調整で十分にカバーできる範囲であると考える。したがって、当初想定に比べると研究進度は「やや遅れている」といえる。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の影響が続いており、企業調査を新たに展開するのは難しい状況にあるように思われる。この点を踏まえて、人事担当者や従業員がタレントマネジメントをどのように知覚し、反応を示しているのかという点に着目したアンケート調査を当初想定よりも大規模に実施して、研究計画上の問いを多面的に検討できるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響を鑑みて、手続き不要な範囲で使用計画の一部を変更した。具体的には、旅費支出をゼロとし、購入予定であった物品の一部についていったん見送りとした。また、今年度購入予定であった洋書の一部が、出版遅延や書店都合によって購入できなかった。 2021年度も引き続き、個別企業を訪問してのヒアリング調査は困難であろうことから、当初想定していた従業員対象のオンライン調査とは別に、人事担当者を対象としたオンライン調査の実施を考えている。今回生じた次年度使用額の多くは、そのための費用に充当することを見込んでいる。また、出版遅延などで購入できなかった洋書は、出版を待ったり新たな購入先を探したりすることで年度内に購入する。
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