研究課題/領域番号 |
20K13619
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
石井 隆太 福井県立大学, 経済学部, 助教 (80842872)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マーケティング・チャネル / 流通チャネル / マルチ・チャネル / 国際マーケティング / 輸出チャネル |
研究実績の概要 |
「海外市場におけるデュアル・チャネル選択要因の探究」と題する本研究プロジェクトでは、「チャネル同士の衝突が発生しやすい海外市場で、なぜ、企業はデュアル・チャネルを選択するのか?どのような場合に、デュアル・チャネルの選択は有効なのか?」という問いに取り組んでいる。研究プロジェクトの1 年目に該当する本年度は、既存文献のレビュー、予備分析、予備調査を実施した。具体的には、まず、既存文献のレビューを行うことによって、海外市場におけるデュアル・チャネルの選択を説明するためには、企業の内部特性として、市場志向能力に着目するべきであると判断した。そこで、本分析を行うのに先立って、過去に収集済みであった国内市場におけるサーベイデータを分析することで、市場志向能力と密接に関連している、企業の情報収集能力が、デュアル・チャネルの選択を促すということを見出した。この研究成果を取り纏めた論文は、査読を経て国際学術雑誌に掲載されるに至った。さらに、海外市場における既存のサーベイデータを分析することによって、市場志向能力がデュアル・チャネルの選択に影響を及ぼすということを見出した。この分析結果は、査読審査を経て、オンラインで開催された国際学会にて発表された。さらには、研究を進めていく中で、デュアル・チャネルの中にも、直接チャネルと間接チャネルの比率の点においてバリエーションが存在することに気がつき、それを、チャネルの多様性として概念化した。そして、多様性が、経営資源の効果を高低させることを見出した。この研究成果は、国際査読誌で発表された。最後に、予備調査として、海外展開が期待される伝統工芸品メーカーへのヒアリング調査を実施した。そして、伝統工芸品の流通戦略においても、デュアル・チャネル戦略が採用されており、直営店の所有と量販店の使用による相乗効果を得ているということを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
プロジェクト1年目に該当する本年度は、既存文献のレビュー、予備分析、予備調査を実施した。当初の目標は、市場志向能力の効果を検討することであったが、上述のとおり、既存文献のレビューと、国内外のサーベイデータの分析を通じて、その目標を達成することができた。さらには、その過程において、チャネルの多様性が企業成果に及ぼす影響を検討することもできた。それゆえ、本プロジェクトは、現在のところ、当初の計画以上に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
上述してきたように、本プロジェクトの鍵概念の一つは、企業の内部特性たる市場志向能力である。他方で、もう一つの鍵概念は、企業の外部環境たる文化的距離である。文化的距離は、海外市場におけるチャネル戦略に多大なる影響を及ぼすということが示されており、それゆえ、デュアル・チャネルの選択にも多大なる影響を及ぼすと考えられる。そこで、今後の研究方針として、まず、文化的距離に関する既存文献のレビューを実施し、その効果を理論的に検討する。さらには、貿易にかかわる企業に対してアンケート調査を実施し、データを新たに収集して、文化的距離の測定尺度の開発・精緻化を行う。このようにして、文化的距離がデュアル・チャネルの選択に及ぼす影響を検討するための予備分析を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本プロジェクト1年目において、当初、製造企業を対象とした大規模なアンケート調査の実施を予定していたものの、予想外に、既存のサーベイデータを入手することができて、その加工・分析の作業を実施したため、アンケート調査を実施することができなかったため、次年度使用額が発生した。既に、アンケート調査を実施するための準備を始めており、具体的には、サンプリングフレームの確定、対象企業リストの作成について進めている。次年度には、この延期したアンケート調査を実施する計画である。
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