研究課題/領域番号 |
20K13633
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研究機関 | 流通科学大学 |
研究代表者 |
綿貫 真也 流通科学大学, 商学部, 准教授 (10844243)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ブランドへの愛着 / 消費者神経科学 / メタアナリシス |
研究実績の概要 |
本研究は、統計的メタアナリシス の手法を用いることで、ブランドへの愛着に関する神経基盤を明らかにした世界で最初の研究例である。本研究では、被殻、尾状核、島皮質がブランドへの愛着に関連する脳領域であることを明らかにされた。これにより、ブランドへの愛着は、習慣形成と長期的報酬期待を基礎する強化学習システムであることがわかった。さらに、マーケティング研究におけるブランドへの愛着研究は、「母の愛」「恋愛」などの対人関係に関する心理学的考察を、その理論的な基礎としているが、本研究では、ブランドへの愛着とそうした対人関係に基づく愛着関係では、脳の活動領域が異なり、両者は異なる種類の愛着であること示された。このことは、ブランドと消費者間の関係性に対して、対人心理学の理論を安易に適用することの危険性を示唆している。さらに、本研究結果は、これまでのような対人心理学の応用を超えて、消費文脈における独自の心理学理論を構築する必要性に関して、一つの神経科学的なエビデンスを提供したという学術上の意義を有する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の目標は、FMRI実験に向けて、これまで不確定であったブランドへの愛着に関連する脳領域に関して、あたりをつけることであったが、先の研究成果により、達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度では、ブランドへの愛着に関する最も基礎的な神経基盤を明らかにすることができた。令和3年度では、この基礎的な領域に関連する脳活動領域を明らかにすることで、ブランドへの愛着に関する包括的な神経基盤を明らかにしていきたい。言い換えれば、令和2年度では、ブランドへの愛着に関連する局所的な脳領域を明らかにしたが、令和3年度では、令和2年度で得られた結果をベースとして、統計的に当該領域に関連する脳領域を推定して、ブランドの愛着に関連する脳領域間のネットワークを捉えることを目的としている。この意味は、近年、認知神経科科学では、心的表象を捉えるためには、局所的な脳の活動ではなく、複数の脳領域間の活動をネットワークとして捉え、考察することが主流となっているためである。ネットワークで捉えることの利点は、ブランドへの愛着に関連する心的現象を多面に捉えることができる点にある。ブランドの愛着は複雑な心理現象であるので、考えられる実験方法と、それに対応する予測結果が数多く想定され、実験の切り口が無数に存在することが想定される。しかし、ブランドの愛着に関連する、いくつかの心的現象に関連する脳活動領域が特定されることで、実験計画の建てやすさ、それに対する結果への見通しを予測することが可能となる。つまり、期間と予算が限られた中で、効率的に実験計画を進め、有効な結果を得られる確率が高くなる。このように、統計的メタアナリシス により、ブランドへの愛着に関連する脳活動のネットワークを特定することで、闇雲に、実験と仮説を繰り返すのではなく、ブランドの愛着に、強く関連する脳活動領域を特定しやすくなり、効果的な実験計画の立案が可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ジャーナルのAPCに加えて、FMRI実験の被験者抽出のために必要な大規模定量調査費用を主な使用用途として考えている。
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