研究課題/領域番号 |
20K13652
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
小村 亜唯子 神奈川大学, 工学部, 助手 (40848529)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 顧客関係性 / 営業利益 / 安定性 / 固定収益会計 |
研究実績の概要 |
営業利益の安定性を高めることは,継続的投資や従業員の雇用維持の源泉となり,資本コストを通じた企業価値向上につながるほか,利益予測の精度や資金調達のしやすさにも関係する。しかし,これまでの管理会計研究において,営業利益の安定性をどのように高めればよいか,そのメカニズムがほとんど明らかにされていないという問題がある。そこで,申請者は,固定収益会計の利益安定化メカニズムを明らかにすることを目的として令和2年度に次の研究活動を行った。 「研究課題1-①顧客満足度の多期間の影響」と「研究課題1-②顧客満足度ドライバーとコストの関係」について,量的検証とインタビュー調査を行った。まず,量的検証については,解析に必要となる従業員アンケート調査を実施した。また,5年間の顧客の取引履歴データのコーディングを行った。顧客アンケート調査については,コロナ禍における顧客の状況を加味し,翌年度に見送った。過去に収集済みのデータと併せ,従業員の顧客ニーズ充足行動が,顧客満足に影響し,ひいては,利益の増加と安定性向上に影響していることを明らかにした。そして,量的検証結果の妥当性を明らかにするため,リサーチサイトに対するインタビュー調査を実施した。
[対外発表] 「研究課題1-①顧客満足度の多期間の影響」に関連して,顧客の限界利益がある一定期間においてどのように推移するのか,隠れマルコフモデルによって分析した。本研究成果は,Journal of Strategic Marketingに掲載された。 [リサーチサイトの追加]リサーチサイトの追加を令和5年度に予定していたが,食品製造販売会社における固定収益会計を基礎理論とした解析が可能になった。同社との共同研究は令和3年度以降も継続することが決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[基礎的データ収集]アンケート調査によって,解析に必要となる基礎的情報を収集することができた。さらに,顧客の顧客の取引履歴データの提供を受け,多期間における顧客別の利益を算出した。 [因果関係の解析・分析モデルの構築・実態把握]管理会計学,マーケティング,ファイナンス等において関連する先行研究をレビューし,仮説を構築した後,隠れマルコフモデルや共分散構造分析等による量的な検証を進めている。 [リサーチサイトの追加]新しく食品製造販売会社をリサーチサイトとして追加することが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
「研究課題②顧客セグメンテーションと製品市場ミックス戦略」に取り組む。また,令和4年度に予定している「研究課題③利益安定性情報が,従業員の動機づけに与える影響」の予備的調査として,予算目標の困難性が従業員の達成志向的ワークモチベーションに与える影響について,複数の日本企業における従業員を対象としたアンケート調査を実施し,量的に明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,コロナ禍の状況があり,経済状況が大幅に変化した顧客に対してアンケート調査を送付することで,リサーチサイトに対する顧客の心象が悪くなってしまうことを理由に,顧客に対するアンケート調査の実施を見送ったことである。ただ,次年度においては,現在,同社は,変化した経済環境の中における顧客の意識を捉え,それに対処する必要があると認識を改めており,翌年度分として請求した助成金と併せて顧客に対するアンケート調査を実施する予定である。
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