研究課題/領域番号 |
20K13653
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
苗 馨允 椙山女学園大学, 現代マネジメント学部, 講師 (60749414)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | IFRSの任意適用 / 財務報告の質 / 配当 / 会計環境 |
研究実績の概要 |
本研究は特定の国や地域における固有の会計環境に注目し,それらの固有性がどのようにIFRSの適用や企業の財務報告に影響を与えているのかを解明することを主たる目的の1つとしている。 当該年度に,IFRSを任意適用した日本企業に焦点を当てて,IFRSの任意適用が企業の財務報告の質(会計情報の価値関連性で測られる)にどのように影響を与えているのかを解明するための研究を実施している。当該研究は,純資産や純利益だけでなく,日本基準とIFRSの個々の会計基準(たとえば,のれんや退職給付に関する会計基準)の差異が,日本基準の会計数値に対して,追加的な価値関連性を有するか否かについても調査する。予備調査では,日本基準の会計数値に対して,正または負の価値関連性を有する個々の会計基準(たとえば,のれんや無形資産に関する会計基準)が特定されている。 また,日本企業の株主還元に焦点を当てて,IFRSの任意適用が日本企業の現金配当に如何なる影響を与えるのかを解明する研究も行っている。情報の非対称性が存在していることを前提にすれば,現金配当はフリー・キャッシュ・フローを巡る経営者と株主との間のエージェンシー問題を軽減する機能を果たす。一般に,IFRSの任意適用によって,経営者と株主間の情報の非対称性が低減されると思われる。そこで,当該研究は,IFRSを任意適用した日本企業を対象に,IFRSの適用による情報環境の改善がどのように企業の配当に影響を与えるのかを解明することを主たる目的としている。予備調査では,IFRS任意適用企業の株式配当率(配当利回り)は,IFRS任意適用後に有意に高くなることが示されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの進捗状況は次のとおりである。 第一に,IFRSの任意適用が日本企業の会計情報の価値関連性に与える影響を解明するための研究に関しては,日本基準とIFRSの個々の会計基準の主な差異を整理し,2020年12月31日時点でIFRS適用済の日本企業を対象に,データ収集および予備調査を実施した。 第二に,IFRSの任意適用が日本企業の配当に与える影響を明らかにするための研究に関しては,IFRSの(強制)適用が配当に与える影響に着目した先行研究,および日本企業の配当の特徴を明らかにした先行研究を中心に,文献調査を実施した。また, 2021年3月期までにIFRSに基づく有価証券報告書を開示した任意適用企業を対象に,予備調査を実施した。 上記の研究成果は,「日本的会計諸制度の変遷と課題」(国際会計研究学会研究グループ中間報告書,研究代表者・角ヶ谷典幸)の一部としてまとめられ,期間限定で公開された。 ただし,当該年度に,学術誌への投稿は順調に進まなかったため,進捗状況はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は次のとおりである。 1.上記の研究について,予備調査期間以降にIFRSを任意適用した企業をサンプルに加え,追加したデータを収集する予定である。 2.研究成果を学術論文としてまとめ,国内外の学会で報告する予定である。 3.学会で得られたコメントを反映させる修正を行い,国内外の学術誌に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、コロナの影響によって旅費が発生しなかったためである。 次年度使用額は、研究に必要な備品と消耗品を購入するために使用する予定である。
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