研究課題/領域番号 |
20K13658
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
井上 秀一 追手門学院大学, 経営学部, 准教授 (00785909)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 専門職組織 / 会計化 / 管理会計システム / ミドルマネジメント / 医療機関 / 大学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,医療機関や大学をはじめとした専門職組織において,管理会計システムの導入に伴う「会計化(Accountingization)」にどのように対応しているのか,ミドルマネジメントの側面から検討することである。 先行研究では,専門職組織において管理会計システムを導入した場合,専門職としての規範や価値観から現場が抵抗し,管理会計システムが機能しないケースが少なくないとされてきた。しかし,一方で,現場が需要を示し,管理会計システムが機能するケースもあることが示され,ミドルマネジメントは,管理会計システムが機能するか否かに重要な影響を及ぼしている可能性が指摘されている。 本研究では,これまで医療機関を対象とした参与観察やインタビュー調査のデータに基づき,主に,現場が管理会計システムに対して抵抗を示すケースについて検討してきた。そこで,当年度は,現場が需要を示すケースを検討するため,バランスト・スコアカード(BSC)を10年以上にわたり継続的に実施し, 医療と経営のパフォーマンスが向上している医療機関をリサーチ・サイトとした。当該医療機関へのインタビュー調査によって,下記の3点がBSCの定着要因として重要であることが示された。 (1)医療専門職が取り組みやすいよう戦略マップやスコアカードの簡素化を図ること。(2)推進チームによるBSC運用支援体制を構築すること。(3)インセンティブ・システムを構築し, 医療専門職のBSCへの取り組みに対するインセンティブをもたせること。 上記の成果は,ケース論文として公表している。しかし,トップマネジメントへのインタビューに留まっており,ミドルマネジメントや現場がどのようにBSCに関与しているのか, そのプロセスについては検討できていない点で限界がある。そのため,次年度は当該医療機関に対する追加的なインタビュー調査を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では,専門職組織の代表例として,医療機関だけでなく大学についても調査を実施する予定であったが,新型コロナウイルスの影響により調査が遅れており,医療機関に対する調査に留まっている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は医療機関への追加的な調査と大学への調査を実施する予定である。前年度に引き続き,対応可能な調査協力先ではオンラインによるインタビューに切り替えるなど,研究の進捗に支障をきたさない方法で対応する。 また,次年度は最終年度であることから,これまでの成果をまとめ,学会報告及び成果論文として出版を行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により本来実施する予定であったフィールド調査が実施できておらず,また,学会もすべてオンラインとなったため,計画時に計上していた旅費交通費に大きな差額が発生した。 次年度はインタビュー調査をはじめとするフィールド調査を実施予定であり,学会についても対面による開催が増えつつあるため,生じた差額については次年度の調査費用および旅費交通費に充当する。
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