研究課題/領域番号 |
20K13664
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研究機関 | 大手前大学 |
研究代表者 |
坂元 英毅 大手前大学, 現代社会学部, 准教授 (40804307)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 公会計 / 行政評価 / 業績予算 / 行政経営 |
研究実績の概要 |
本研究の主題は、地方自治体における主要な利害関係者である議会や住民が、業績情報に対して有する情報ニーズの態様と、ニーズが充足された結果、どのような行動改善が見られるのかについて探索的に検討することである。わが国の地方自治体では、行政評価から得られる業績情報が予算編成に十分に活用されていない、という指摘がなされていることを踏まえ、議会や住民がどのように業績情報を活用することができるか、を明らかにすることを目的としている。 本研究を進めるうえで、まずは理論枠組みを形成することが重要である。そこで、業績情報の予算編成への活用(以下、「業績予算」)に関する近年の国際的な研究、実務の動向を分析するため、海外文献を渉猟、検討することに注力した。その結果、業績予算の取り組みは先進国に限らず近年では途上国にも広がりを見せており、これら含めた膨大な蓄積の中で、今日的な課題が整理されてきていることがわかった。それは、かつて期待されていたような政治的プロセスに代替されるものでは既になくなっており、新たな意義、役割が提示されていることを示していた。新たな役割の一つにコミュニケーションプロセスとしての業績予算がある。この観点からの課題として、業績の測定と実際の使用の間にミッシングリンクが発生している可能性があることがわかった。すなわち、様々なステークホルダーに対して情報を開示するにあたって、どのように業績情報を構築するのか、あるいは誰が意思決定の鍵を握っているのかがコミュニケーションの効果に影響を及ぼすため、戦略的にコミュニケーションの枠組みを構築しなければならない、ということである。このことは本研究の問題関心である議会や住民の情報活用と表裏一体であることから、今後の研究における理論枠組みの精緻化に資するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では2020年度に国内自治体の議会議員へのヒアリングにより事前統制段階での行政からの情報開示の現状と、それを踏まえた具体的な行動の態様を調査することとしている。また、英国地方自治体の訪問調査を実施し、住民説明会への参与観察を通じて、業績情報を利害関係者がどのように受容するかを検討することとしている。 2020年度はコロナ禍の影響により、訪問調査が困難な状況にあったことから上記調査が実施できなかったが、代替策として文献渉猟と分析により仮説の精度を高めることに注力した。このことにより、今後実施する訪問調査の成果向上が期待できるが、これまでの研究についてはいまだ成果発表に至っていないことから「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
英国におけるコロナウイルス感染症の状況を注視しながらではあるが、実施できていない渡航調査を2021年度に行う予定である。渡航調査では住民説明会での参与観察を行うことが重要であることから、オンライン等による代替は困難であると考えているが、仮に2021年度も渡航が不可能な状況であれば、議会議員や自治体職員へのオンラインでのヒアリングに切り替えることも視野に準備を進める。 国内自治体の議会議員に対するヒアリング調査については、オンラインでの実施を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた海外訪問調査を実施することができなかったため、次年度使用額が発生した。海外訪問調査を次年度に実施して、当該金額を利用する予定である。
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