研究課題/領域番号 |
20K13670
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研究機関 | 石巻専修大学 |
研究代表者 |
野島 那津子 石巻専修大学, 人間学部, 准教授 (00788614)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 「給付金のたかり屋」 / メディア / 監視文化 / 監視社会 / 社会的振り分け / 「合理的差別」 / 排除 / 嫉妬 |
研究実績の概要 |
コロナ禍の影響で今年度も渡英できず、BFIでの番組閲覧・データ作成ができなかった。そのため、昨年度に収集した「給付金のたかり屋」に関する新聞記事のテキストデータの整理・分類を中心に研究を行った。テキストデータはMAXQDAにてコード化し、「給付金のたかり屋」のサブコード統計量から指示対象を同定したうえで、言及記事数や記事内容について分析を行った。高級紙を中心とする一部データについての暫定的な分析結果として、(1)「給付金のたかり屋」で名指される対象の範囲が、2010年頃を転換点として、移民や外国人といった「外部」からシングルマザーや障害者といった「内部」へと急激に拡大していったこと、(2)カテゴリー自体を犯罪者予備軍として扱うことないしそれを問題視する傾向がみられること、(3)いったん「給付金のたかり屋」と見なされたカテゴリーは「外部化」されうることが見いだされた。本研究の結果については、第94回日本社会学会大会で報告を行った。 また、文献研究として、社会的排除論や監視社会論の基礎的文献を読み進める一方で、新聞記事テキストデータ分析の結果を踏まえ、民主主義社会における嫉妬や憎悪に関する論考の精読にも着手した。「給付金のたかり屋」の社会的振り分けが生じるプロセスないし要因の一つの見立てとして、本文献研究からは、民主主義社会が要請するポリティカル・コレクトネスへの不満が、可視化されたある種の人びとの「生活」と出会うとき、嫉妬や憎悪といったねじれた感情が生じうるだけでなく、それが社会的に正当化される/されなければならないものとして主張・提示されることが示唆される。今後さらに文献を読み進めるなかで、社会的振り分けのメカニズムを説明する理論的枠組みの構築を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に続き、今年度もコロナ禍により英国に渡航することができず、BFIでのデータ収集を実施することができなかった。ただし、新聞記事データの研究は比較的順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、渡航にあたって行動が制限されない場合、渡英しBFIにて番組閲覧ならびにデータの作成を行う。新聞記事のテキストデータについては、これまで高級紙を中心に分析を行っていたため、今後はタブロイド紙にも対象を広げて整理・分析を行う。また、最新の記事データの収集や紙面の閲覧・複写のため、適宜国立国会図書館にて作業を行う。なお、国立国会図書館の所蔵は一部の高級紙に偏っているため、渡英できた際には、大英図書館にて重要記事の紙面を確認する。今年度に日本社会学会にて中間報告を行った一部データの分析については、論文化に着手する。これらの調査・データ分析に加え、引き続き社会的排除論や監視社会論を中心とした文献研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により渡英できず、昨年度に続き旅費を使用しなかったため。また、学会大会もオンライン開催だったため旅費が生じなかった。今後は状況を見て適宜渡英し、英国BFIでのデータ収集のための調査旅費として適切に使用する。
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