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本研究は、英国における給付金受給者の生活の可視化と社会的振り分けとの関係を検討し、当該社会における監視と排除の実態を明らかにしようとするものである。当初の計画では、最低3回の渡航によって、BFI(British Film Institute)にてbenefit scroungers(以下bs)に関する番組を可能な限り閲覧し、データ作成を行う予定であったが、コロナ禍で研究初年度から渡航できずにいた。2023年度に研究開始後初めて渡英し、BFIにて関連番組の閲覧・データ作成を行った。また、大英図書館では、bsに関する新聞記事の閲覧・紙面データの収集を行った。1回の渡航ではデータを十分に集めることができなかったため、研究期間を延長して再度渡英し、BFIで関連番組の閲覧・データ作成を行った。また、研究期間を通じて、国立国会図書館で新聞記事のテキストデータならびに関連文献を収集した。 本研究では、とくにBenefits Britain: Life on the Dole(以下BB)とBenefits Street(以下BS)との共通点・相違点を検討した。先行研究では、BSもBBも「貧困ポルノ」と捉えられ、BBの方が制度にやや批判的であることが指摘されている。しかし、BBで用いられる効果音、ナレーション、構成を考慮すると、必ずしもBBの方が批判的であるとは言えない。また、BSはポスト福祉主義を引き受けるコミュニティの物語として一部で「受容」されたのに対して、BBは毎回舞台が変わり、登場人物と地域とのかかわりの程度は一様ではなく、コミュニティの物語と捉えるのは難しい。今後さらなる分析が必要であるが、これらの番組を通して、給付金受給者が「良いアンダークラス」と「悪いアンダークラス」に振り分けられること、しかし、「良いアンダークラス」であっても給付金の受給は非難されることが示唆される。
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