英国ではブレア政権期に、1990年代後半のスコットランド、ウェールズ・北アイルランドへの権限委譲が進んだ。近年国内の若者政策は4地域間の差異が顕著になっている。教育維持手当(Education Maintenance Allowance)は低所得家庭の若者が16歳以降も学習を継続することを容易にするための政策であるが、イングランドでは財政緊縮を理由に2008年に廃止されたが他3地域では継続されてきた。議会記録、質疑応答集などの分析、自治体の担当者への調査から、スコットランドは、ヤングケアラーの「ケアによる欠席」でも手当の支給が停止されないよう制度を改善するなどの独自性を有することを明らかにした。また、この過程で、若者のボランタリー組織(Scottish Youth Parliamentなど)が調査による当事者の声のとりまとめや議会への請願活動など重要な役割を担ったことを明らかにした。また、ヤングケアラーだけでなく、様々なバルネラビリティ(脆弱性)をもった若者のアクセシビリティという視点から、早期離学の防止および早期離学者の支援にかかわるさまざまな政策を継続的に見直していくことを課題として指摘した。 本研究の全体を通じて、生徒側の問題に注目されてきた中退について、生徒と関わる教員が自らの責任範囲、関りの限界をどのように認識してきたかを検討し、高校中退者への対応における現在まで続く課題と困難を明らかにした。また、高等学校の教員が従来主に担ってきた高校中退への対応について、外部機関が新たにどのような役割を担っているのかを検討した。そして海外の実践について、英国を中心に、特に経済的な困難や家族の問題を抱える生徒が就学継続のためにどのような支援を行っているのかを明らかにした。
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