研究課題/領域番号 |
20K13681
|
研究機関 | 小樽商科大学 |
研究代表者 |
須永 将史 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (90783457)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 家族規範 / 感情管理 / 会話分析 / 対面的相互行為 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,医療診察場面において家族規範がどのように反映されているのかを解明することである.2021年度は,2020年度に出版した診察場面の相互行為研究についての論文を踏まえ,家族規範の分析をより精緻に進めることを目標とした.同時にコロナ感染拡大によって増加したオンラインコミュニケーションによって,人々のコミュニケーションの構造がどのように変化したかという基礎的な研究も進めた.具体的には,1)「家族への配慮と家事労働――感情管理と道徳を教えること」という研究論文では,家族成員内の感情管理がどのように獲得され,教えられるのかを分析した.会話分析の手法を用いて,両親が子どもを叱ったりなだめたりする際にどのように子どもに道徳や倫理を伝えながらそれをおこなうのかを具体的な発話・行動をもとにあきらかにした.この知見については,ジェンダー論の理論的研究および追加のデータをもとに,さらに分析を精緻化していく予定である.また,2)「オンライン視察はどのように「物足りない」のか――本拠としての現地視察」では,オンライン研修の中で「実際に会って研修すること」がどのように理想化され,物足りなさを埋めるレトリックとして機能しているのかをあきらかにした.そしてそこから人々が相互行為やそれにまつわる規範をどのように考えているのかを分析し,学会報告を行なった. データ取得に関しては,2021年度は,新しい調査をおこなうことはせず,これまで得たデータのクリーニングをおこない,分析を進めるための整備を中心的におこなった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究概要で述べた通り,2021年度は論文集に1件の論文を掲載し,学会発表を1件おこなった.またほかにも共著で国際雑誌に論文を投稿した.こちらは,家庭内での「片付け」をめぐる相互行為的規範の分析である.2020年度におこなった診察場面の分析に加え,2021年に中心的におこなった家族規範の分析を基盤に,2022年度は,さらに両者を発展的に組み合わせ展開するような研究を進める予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
現在,家族規範が診察場面の中でどのように見いだせるかをさらに深く分析した知見をまとめている段階である.今年度のうちに雑誌『認知科学』および『社会言語科学』に論文を投稿する予定である.コロナ感染により,追加のデータ収集はできなかったが,現時点で取得済みのデータで,すでに十分な量のデータ量といえる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染のため,出張のための旅費およびアルバイト雇用による謝金等に関する計画を変更したため.
|