本研究は、近年の献血者数の減少を背景に、献血者における贈与と共同性の論理について実証的に研究することを目的とするものである。さらに、献血行為の実証研究を通して、匿名他者との連帯形成のための要件についても検討することを目的としている。2023年度の研究実績の概要は以下の通りである。 第1に、文献等の整理を行い、日本における血液事業の歴史や輸血によるウイルス感染の問題、ウイルス検出・除去技術についてまとめた。上記の内容は書籍の一部として発表した(『薬害とはなにか』「売血と献血――血液提供をめぐって」)。 第2に、献血とは広くはボランタリー行為とみなすことができることから、文献等の整理を行い、ボランタリー行為と贈与、関係の非対称性、自発性などをめぐる問題点について検討した。上記の内容は書籍の一部として発表した(『入門・福祉社会学』「福祉社会の形成とボランティア活動」)。 第3に、献血者への聞き取り調査のデータをもとに、どのような人が献血するのかについて分析を行い公表した(「見知らぬ他者への贈与――どのような人が献血するのか」『Academic Research on Donations』)。 第4に、献血およびボランタリー行為に関する量的調査を実施し、献血の規定要因について分析を行った。過去1年間の献血経験有無や累積献血回数などを従属変数とした。独立変数については、性別、年齢、社会階層、社会関係などの変数について分析を行った。
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