研究課題/領域番号 |
20K13706
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
陳 怡禎 日本大学, 国際関係学部, 助教 (30845722)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 趣味共同体 / ファン研究 / 社会運動 / 東アジア / 台湾 / 香港 / 趣味縁 / 若者研究 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「社会運動研究」や「ファン研究」の両面から、東アジアの現代社会の若者、中でも特に女性は、いかに趣味を用いて社会空間を構築しているか、さらに社会的関係性を再編成していくかについて考察することである。 本年度の研究成果について以下で説明する。(研究成果の一部は、研究活動スタート支援課題番号「19K23275」と共同実施するものである) ①以下の日本国内学会で発表した:『社会運動を語る女性参加者-社会運動空間における「趣味共同体」に関する研究-』(日本マス・コミュニケーション学会 2020年春季大会)、『社会運動空間における「女性像」に関する考察-台湾・ひまわり運動を事例に』(北東アジア学会第26回大会)、『「かわいい社会 運動」の作法-社会運動参加者による「語り」の意味を考察することを通して』(日本マス・コミュニケーション学会 2020年秋季大会)、『「かわいい」社会運動の作法 ―台湾ひまわり運動における趣味共同体を事例に』第93回日本社会学会大会。 ②以下の日本国内学術誌に論文を投稿した:『社会運動空間における「女性の遊び」ー台湾ひまわり運動を事例にー』(女子学研究,10号 25-34頁)、『社会運動 空間における女性参加者のあり方 ――台湾ひまわり運動を事例に』(国際関係学部研究年報, 41号 43-53頁)。 『〈貢献〉するファンダム ――デジタル空間における日本/台湾アイドルファンの実践を事例に』(ソシオロゴス,45号近刊) ③以下の国際学会で発表し、予稿論文を寄稿した:『傑尼斯偶像網路時代下的粉絲消費新模式――傑尼斯迷網路使用之台日比較』((台湾)文化研究學會年會)。 発表や論文において研究者は、東アジアの女性が趣味縁をめぐって共同体を結成し、さらにその趣味共同体を通して公的社会空間への進出を果たしたことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
元々予定していた台湾や香港でのフィールドワーク調査は、新型コロナウイルスの影響によって実施できなかったため、研究は計画通りに行うことができなかったが、趣味縁研究(ファン研究)の部分は、インターネット上の非対面式インタビューは順調に実施できた。そのため、本研究課題の進捗状況は概ね順調に進展していると考えられる。 また、フィールドワークや対面式インタビュー調査ができなかったが、早速研究手法の方向性を変え2次資料の収集や分析に重きを置くようにしたため、デジタルアーカイブなどの二次資料を利用し、新聞記事、運動現場記録映像や写真などデータを集めることができた。このように香港や台湾での既存研究文献を収集することができ、令和2年度には、前述したデータの分析作業に入ることができた。また、学会発表や査読論文の投稿もできて、次年度以降の調査や成果発表に良い基礎を築いていたと考えられる。 しかしその一方、趣味縁研究は順調に実施できた一方、社会運動論部分の研究は、対面式調査にはインフォーマントの信頼を獲得しにくいなどの調査限界があるため、研究手法の変更を次年度以降の課題となると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年にもまだ新型コロナの影響が予想されているため、フィールドワーク調査は2021年後半に再開することを目指しているが、実施できない事態を想定した上に、今後の研究の推進方策を以下のように考えている。 ①現地でのフィールドワークは実施不可能の場合、インターネットを活用し、引き続き台湾のインフォーマントに対し、非対面式インタビューを実施する。その際に、インフォーマントから社会運動参加当時の記録(写真や持ち物等)を取り寄せるように交渉を行い、彼女たちの運動参加経験を詳しく分析する。また、新型コロナウイルスに加え、社会情勢が厳しくなった香港に対する調査の分析手法を方向転換し、インタビュー調査ではなく、二次資料に対する分析を中心に行いたいと考えている。(ただし、香港に対する調査では、社会運動への参加経験より、趣味共同体についてのインタビュー調査自体は敬遠されないだろうと予想し、趣味共同体の研究を通して、香港社会の女性の社会的位置付けの変化を考察できると考えられる) ②趣味共同体やファン研究を引き続き行い、台湾や香港の女性趣味共同体の活動や共同体内部の関係性変化に注目することを通して、私的趣味と公的社会空間との関係性について考察し続ける。 ③日本国内の学会は、オンライン実施や現地実施のかたちで再開されつつあるため、日本国内での学会発表や論文投稿を引き続き行う。一方、海外での学会発表は実施困難の場合、2020年度までのデータ分析成果を査読論文として台湾・香港現地の学会誌に投稿する。オンラインで研究会を開催する方法も模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた台湾や香港での海外調査は、新型コロナウイルスによって実施できなかったため、海外旅費の次年度使用額が生じた。 翌年度分と合わせた使用計画は以下のように考えている。 ①2021年後半に新型コロナウイルスの感染拡大状況を注視しながら引き続き、ネット上の非対面インタビュー調査、または日本在住の香港や台湾のインフォーマントに対して対面インタビューを実施する予定である。また、②インタビューで得た調査データを文字起こし、考察成果を論文投稿・日本や海外学会での発表を引き続き行う。
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