研究課題/領域番号 |
20K13708
|
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
永井 健太郎 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 助教 (70847417)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 環境 / 世論 / メディア / 内容分析 |
研究実績の概要 |
本研究は、マスメディアが世論調査結果を利用して、どのように世論を作り上げているかを解明することが目的である。初年度、環境問題に関する世論調査の新聞報道を分析した。まず、世論調査結果を伝える新聞報道は、世論調査に必然的に伴う誤差には一切言及しないことが明らかになった。また、調査概要の開示は、自社が行ったものに関してのみ開示しており、それ以外の調査主体の場合は部分的である。したがって、世論調査結果を正しく理解するための情報提供が不十分であることが示された。誤差への言及を排除することで、調査結果への意味付けと解釈を恣意的に行える。誤差を考慮すれば断定ができない僅差であるにも関わらず、片方の結果のみを強調する。新聞報道は、恣意的に選択した世論調査結果を根拠として、「日本人の環境意識が高まっていく」という世論表象を行っていた。 次に、この世論表象の傾向は、新聞社間で共通していることがわかった。これは、環境問題というテーマでは各社のイデオロギーが世論表象への影響を及ぼしていないことを示唆し、日本においては、環境問題がイデオロギーの外に置かれている可能性を示した。もう一つの新たな発見としては、2010年から環境問題に関する世論調査結果が報道されていないということである。これは、2010年からマスメディアが環境問題に関する世論の構築から距離を取っていたことを意味する。また、これは、大手新聞社が環境問題にニュース価値を見いだしていないということを示唆し、環境問題の優先順位が大きく後退したことも意味する。このようなマスメディアの態度は、環境問題という重要で長期的に人類の課題となる問題を後景に退かせ、日本としての環境問題への取り組みを遅らせる要因なるかもしれない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度はCOVID-19の世界的な流行により、研究および成果の発表に大きな障害となった。教育業務において全面オンライン化が実施され、予定外の業務が増加し、本研究へのコミットメントが大幅に減少した。結果、年内に予定していた研究発表にまで至ることができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、研究発表を進めるにあたり、まず、20年度の研究発表を、21年度前半に行う。同時に、21年度の研究も平行して進める。資料やデータ収集に関しては、20年度分が早々に収 集できたため、21年度分の資料も一部収集している。21年度はすぐに分析に入れる状況にある。この対応で20年度の遅れを取り戻す予定である。 20年度に開発した機械学習によって、分析対象のテキストを自動分類することが可能になった。しかし、まだ精度に問題があり、現時点での教師データだけではこれ以上精度があがらないことがわかった。そこで、引き続き、人による分類作業を行いつつ、教師データを増やし、機械学習による分類の精度向上を図る。万一、教師データの増強によっても改善が見られない場合は、人による分類を補助する形での利用に変更し、対応する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度では、COVID-19が流行し、国内学会および国際学会が相次いで中止され、旅費としての使用が不可能であったためである。次年度もCOVID-19の流行が世界的にも継続することが予想される。そこで、次年度は国内学会への参加をメインとし、次々年度で国際学会等で研究報告を行うこととする。
|