研究課題/領域番号 |
20K13708
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
永井 健太郎 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員(客員研究員) (70847417)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 世論 / 内容分析 / メディア / 新聞 / 表象 / 世論調査 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、マスメディアが世論調査結果を利用し、その報道の中でどのように世論を作り上げているのかを解明することである。そのために、世論調査結果の報道における(1)世論調査結果を正しく理解するための情報提供を行っているか、(2)世論調査結果への意味づけと解釈、そして、(3)選択と強調の三つから、マスメディアの世論構築の実態を明らかにする。対象として、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞を対象に分析を行う。 第二年度では、憲法に関する世論調査結果の報道を分析し、憲法改正に対する世論のメディア表象を明らかにした。初年度に引き続き、(1)については、世論調査に伴う誤差には言及しない傾向が確認され、調査概要の開示についても自社の世論調査についてのみ開示しており、外部の調査主体の場合は限定的に開示するのみであった。この傾向は、環境問題と憲法改正という異なる争点においても共通しており、世論調査の情報開示の傾向は新聞メディアに共通する傾向である可能性が高まった。 次に、(2)と(3)については、初年度とは異なる知見を得て、研究が進展した。第二年度は憲法改正に対する世論調査結果の報道の分析を行った。この分析では、新聞社の憲法改正の態度が世論調査結果の報道に影響を及ぼすのかに焦点を当てた。朝日新聞、読売新聞、毎日新聞の見出しの内容分析を行い、各社の傾向を探った。分析の結果、新聞社は各社の政治的な態度に沿う形で世論調査結果を扱っていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度はCOVID-19の世界的な流行が継続していたが、計画通り研究を進め、成果を発表することができた。 分析対象とする記事の一部を前年度に収集し、初期調査を行っていたことで、当該年は新聞記事の追加を行いつつも、順調に分析を進めることができた。また、分析した結果は、日本マス・コミュニケーション学会において報告を行った。研究報告後にデータの追加を行いさらに分析を進め、さらなる知見を得た。これらの知見は22年度に研究報告を行う。
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今後の研究の推進方策 |
22年度前半は、21年度の研究成果の未発表の部分を発表すると同時に、22年度の分析に必要なデータ収集および分析をおこなう。22年度は社会保障に関する世論調査結果の報道を対象とする。ここでも、新聞社のイデオロギーが世論調査結果の報道に影響を及ぼし、特定の世論像が形成されるのかが焦点となる。 22年度後半に、それらの研究発表を行う。分析方法に関しては一部変更を行う。21年度には、初年度に開発した機械学習の精度向上を模索し、分析の一部自動化を目指していたが、精度の問題を改善することができなかった。テーマが変わり使用される用語が変化するためであった。22年度も引き続き、人による分類作業を行いつつ、教師データを増やし、機械学習による分類の精度向上を図ることとする。万一、教師データの増強によっても改善が見られない場合は、人による分類を補助する形での利用に変更し、対応する。
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次年度使用額が生じた理由 |
21年度も引き続き世界的にCOVID-19が流行していたため、国内学会および国際学会への出張が行えなかった。 22年度も国際学会への参加は難しい可能性もあるため、研究計画を変更し対応する。当初予定していた3つのテーマ(環境、憲法、社会保障)に加えて、安全保障に関連する世論調査結果の報道を加える。そのため、研究補助者を雇用し、記事データの収集を実施し、分析であるコーディング作業を分担し行うことを計画している。安全保障に関わる個々の争点としては、自衛隊の海外派遣や後方支援に関する争点、第二次安部政権下で争点化した共謀罪および安保法案を対象とする予定である。
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