研究課題/領域番号 |
20K13713
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
狭間 諒多朗 南山大学, 総合政策学部, 講師 (90808312)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 若年層 / 地域移動 / 社会階層 |
研究実績の概要 |
今年度は、還流移動者を対象としたインターネット調査を実施し、分析を行った。 はじめに、サンプルを「若年男性」「若年女性」「壮年男性」「壮年女性」という4つのグループに分け、各グループの特徴を分析した。その結果、、流出時に「いずれは戻るつもりであった」という意識を「若年女性」と「壮年女性」が強く持っているなど、グループによって違いがみられたものの、総じて大きな差といえるものは少なく、とりわけ若年層に特徴的な結果はほとんどなかった。 しかしながら、本研究では、若年層を一括りにせず、属性による違いにも注目している。そこで、若年還流移動者を親と同居しているかどうかで分け、「若年親同居男性」「若年親非同居男性」「若年親同居女性」「若年親非同居女性」という4つのグループを作り、分析を行った。その結果、「若年親同居男性」と「若年親非同居男性」の間に大きな差がみられた。「若年親非同居男性」が、出身地域に愛着を抱いておらず、戻るつもりもなく流出し、戻ってきたことで生活満足度が下がっているという結果が得られた(「若年親同居男性」はその反対の結果)。このことから、若年男性Uターン者においては、不本意に戻ってきた人々と、地域に愛着を抱き自らの意思で戻ってきた人々がおり、その違いが親との同居/非同居によって識別されることが分かった。「若年親同居男性」には、何らかの事情によって流出先で暮らせなくなり、避難先として地元の親と同居している人が多い可能性もある。 以上から、やはり、若年層の還流移動のメカニズムを解明するためには、かれらの置かれた状況に注目する必要性が確認されたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、科研費を使用して、若年還流移動者を対象とした大規模インターネットアンケート調査を行った。 本調査は、調査会社が持つモニターを対象としたWeb調査であり、事前のスクリーニング調査によって、全国の地方圏に住む還流移動移動者を抽出し、調査対象とした。本調査における還流移動者の定義は、出身道県と現住道県が同じで、かつ他都道府県への流出経験を持つ人々、である。事前の割り当てによって、従来の調査では回収率が低くなりがちな若年層についても約1000サンプルを確保している(本調査では25~39歳を若年層と定義)。また、比較対象として壮中年層についても約1000サンプルを回収することができた。コロナ禍の影響を受け、調査のスケジュールに大幅な遅れが出たために、現時点では基礎的な分析を行うに留まっている。なお、その基礎的な分析結果については、日本人口学会中部部会で報告している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度行ったインターネット調査のデータ分析をさらに進めていく。現時点では、基礎的な分析に留まっているが、この調査には多くの項目が含まれているため、それらの関連を多変量解析によって明らかにする必要がある。 それと同時に、当初の調査計画にしたがって、流出者を対象とした調査を行う。流出者とは、出身地域から出たまま、戻ってこない人々である。かれらがなぜ戻ってこないのか/こられないのかを明らかにすることは、ひるがえってなぜ還流移動者が戻ってきたのか/こられたのかを明らかにすることにつながり、還流移動のメカニズムを明らかにするために必要である。この調査も、調査会社が持つモニターを対象としたWeb調査を予定しており、基本的に今年度行った調査と同じ設計にする。調査項目についても、今年度行った調査と同じ項目を多数、使用することにより、両調査データを合わせて分析できるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、研究会・学会がすべてオンライン開催となり、旅費が必要なくなったことが大きい。次年度に予定しているインターネット調査のクオリティを高めるために使用する予定である(サンプル数、質問項目数を増やす、など)。
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