2023年度は、これまでの分析や先行研究の検討について、その研究成果を発表し、収集したデータの整理を行った。まず、地方に定住する在日外国人のボランティア活動の事例研究を論文としてまとめ、移民研究分野の学術誌に掲載した。また、上記の事例研究で得た知見を足掛かりに別のボランティア団体の活動の意義を比較検討する別の課題研究を開始した。そのため、この研究課題で収集したデータの一部は引き続き保管することとした。さらに、これまで収集したデータについて日本社会学会大会で報告を行った。 2020年度開始の本研究はコロナ禍の影響により、ボランティア活動に関するデータ収集を制限された。しかし、研究対象のボランティア団体は継続されており、本研究も含め、できる範囲で地域社会との協働、協力が団体によって行われていたことを本研究は確認できた。 研究期間全体の成果としては、外国人によるボランティア活動のホスト国での意義を示したことが挙げられる。外国人と働いたり、協働したりするための独自の発想を地域社会が必ずしも持っているわけではなく、協働の実践は「多文化共生」という与えられた言葉に集約されてしまいがちである。また人口減を課題に抱える自治体には、「総合戦略」等の施策の中に共生の目標があらかじめ設定されている場合もあり、その目標に沿った市民のボランティア活動が展開されることもある。 本研究は、介護や農業といった、自治体が必ずしも共生の課題として認識していない分野、又は課題を上手く整理できていない分野において、積極的に、そして長期的に地域社会と協働し、同郷人への生活支援を行う在日外国人の団体に着目した。その活動の意義を考察するために、pathwaysや、systems changeという概念を検討、援用し、草の根レベルの外国人の活動が同郷人支援だけではなく、ホスト国地域社会との関係もリードすることを示すことができた。
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