本研究では、独居者の孤立状況に関連する生活習慣や健康状態、社会要因等の修正可能な要因を明らかにすることを目的とした。本研究の結果、次のことが明らかとなった。 まず、孤立の予測因子に関するシステマティックレビューを行い、修正可能な要因として検討すべき要因を明らかとした。レビューの結果、これまでの研究で予測因子として検討されてきたのは修正不可能な社会人口統計学的要因が最も多く、修正可能な要因についての知見が不足していること、修正可能な要因としては、身体的健康要因、心理・認知的要因、社会・文化的要因が検討されていることが明らかとなった。また、家族構成(独居/同居)で層化した分析を行った研究はなかった。 このレビューを踏まえ、地域在住高齢者を対象とした郵送調査および会場招待型健診の結果をもとに、社会的孤立の修正可能な関連要因を家族構成別に検討した。その結果、社会的孤立者の割合は独居者43.3%、同居者26.5%であり、独居者・同居者ともに、最大歩行時間が遅いこと、精神的健康(WHO-5得点)が低いこと、社会的凝集性得点が低いことが社会的孤立と有意に関連していた。さらに、独居者においてのみ、運動習慣がないことが社会的孤立と有意に関連していた。これらの結果より、独居高齢者に特異的な社会的孤立の予防方略として、運動の習慣化の介入が有効である可能性が示唆された。 また、社会的孤立が循環器疾患死亡と関連していること、社会的孤立に関する設問に無回答の者は孤立者と同様に死亡リスクが高まること、社会的孤立者であっても運動習慣を持つことが死亡リスクの低下に寄与することも併せて明らかにし、高齢期における社会的孤立に関する知見を更に強化した。
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