研究課題/領域番号 |
20K13720
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
永野 叙子 筑波大学, 人間系, 研究員 (30853204)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 成年後見制度 / 市民後見人 / 継続的支援 / 地域ネットワーク |
研究実績の概要 |
今年度は、(1) 市民後見人が困難に感じる後見事務と支援ニーズの解明(面接調査)、(2)市民後見人の育成と支援の課題整理、(3)市民後見人との研究会を開催 以上3点を行った。 (1)では、COVID-19感染予防のため、適宜、対面・オンラインを併用しながら、市民後見人が困難に感じる後見事務と支援ニーズを面接調査によって明らかにした。前年度の分析で明らかになった、特に困難さを伴う「医療同意」、「死後事務」をめぐる終末期活動に焦点化し、市民後見人10名と担当ケース20件についての基本情報、具体的なエピソード、市民後見人の意識の変容過程に関する叙述を得ることができた。調査結果から、終末期活動における困難さは、市民後見人、支援・監督する実施機関、双方の経験値にも関連があることが考えられた。また、法的手段を検討する場合には、専門職の助言をスムーズ得られる体制にあることが、市民後見人、実施機関ともに有益であることが示唆された。 (2)では前年度に引き続き、市民後見人養成研修受講者が減少傾向にあること、市民後見人登録者が受任を躊躇(不安視)する現象、一方で市民後見人の受任が進まない理由に関して、先行研究より課題整理を行った。これらを踏まえて、第2期成年後見制度利用促進基本計画(案)における「市民後見人の育成・支援」に関して、育成・支援する実施機関の体制整備をさらに推進するようパブリックコメントに投稿した。 (3)前年度の活動地域を越えた市民後見人との意見交換会では、現在、受任後のフォローアップ研修(継続研修)が実施機関の裁量で実施されており、ニーズに即した研修内容の更新が必要であるとの指摘がみられた。そのため、後進の指導にあたる受任経験者を対象としたフォローアップ研修モデル(案)の検討に向けて研究会を開催し、活動地域の現状を把握した。 以上を勘案しつつ次年度の研究課題を推進する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度:COVID-19の影響を受けたものの研究活動の活性化を図るべく、(1)市民後見人112人分のデータを再分析、(2)先行文献の整理、ならびに(3)市民後見人と実施機関管理職、双方へのヒアリングを実施した。これらにより、厚生労働省『 成年後見制度利用促進施策に係る取組状況調査結果(詳細版)』(2020)における、市民後見人の育成が進んでいない理由の解明、ならびに支援課題を整理することができた。また、実施機関における市民後見人への継続的支援の認識は多様であり、市民後見人が望む支援との間には差異がみられた。 2年度:COVID-19の感染予防に努め、適宜、オンラインまたは対面での調査活動を実施した。その結果、(1)市民後見人が困難に感じる後見事務と支援ニーズの解明(面接調査)、(2)市民後見人の育成・支援に関する課題整理、これらを踏まえ第2期成年後見制度利用促進基本計画(案)パブリックコメントへの投稿、(3)市民後見人との研究会を開催した。 前年度の分析で明らかになった困難さを伴う後見事務の中で、特に医療同意、死後事務をめぐる終末期活動に焦点化し、市民後見人10名の担当ケース20件についての基本情報、具体的なエピソード、市民後見人の意識の変容過程について叙述を得ることができた。 昨年度に引き続き、市民後見人養成研修受講者が減少傾向にあること、市民後見人登録者が受任を躊躇(不安視)する現象、一方で市民後見人の受任が進まない理由に関して、先行研究より課題整理を行った。これらを踏まえて、第2期成年後見制度利用促進基本計画(案)の、「市民後見人の育成・支援」に関して、育成・支援する実施機関の体制整備をさらに推進するようパブリックコメントに投稿した。 受任経験者を対象としたフォローアップ研修モデル(案)の検討に向けて市民後見人との研究会を開催し、活動地域の現状を把握した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進は、研究計画に示した内容を進める。 令和4年度は、市民後見人自ら市民後見人連絡会(市民後見人の会)を運営しつつ、地域のネットワークを活用した市民後見人の活動事例と、実施機関の支援事例を収集し分析する。 調査協力機関・対象者の選定は、地域を基盤とした社会資源(行政、職能団体、民間企業、ボランティア等)を積極的に活用しながら市民後見人への支援を活発かつ先進的に行っている実施機関と、その傘下にある市民後見人で組織する市民後見人連絡会の代表に協力依頼する(各5か所程度)。面接内容は、市民後見人に対する個別支援やフォロ―アップ研修等の基本的な育成・支援内容とプロセス確認、地域の協働相手との関係づくりとネットワーク等を活用した取組、協働活動でうまくいった代表的な事例、残された課題等、特に課題となっていたが、工夫の末、課題を解決した事例を重点的に収集する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度もCOVID-19の感染予防のため国内の移動を伴う学会発表、ならびに成年後見センター視察をやむを得ず取り止めた。それにより、次年度は、先進的な地域の成年後見センターの視察を予定する。 次年度もこれまでの研究成果を情報発信するため、学会発表を予定している。また、面接調査に関してはオンライン調査に切り替えるなど、適宜、状況に応じた方策にて実施する。
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