最終年度は、(1) 市民後見人との研究会を通じて、活動地域における「受任を不安視する理由」を解明するために、フォーカスグループインタビューを実施した。その結果、養成研修直後の不安感は、①後見人としての役割を果たしていけるか、成年後見実施機関からどれだけ支援が受けられるか、受任を待つ間は、②選任の見通しが立たない、家裁が選任する上限の70歳までに選任されるか、受任後は、③後見活動を遂行する上での困難さにあることが明きらかになった。一方で、育成・支援経験が豊富な実施機関のもとで活動する市民後見人は、再任を望む傾向があることが示された。 これらを受けて、当該実施機関と、その機関のもとで活動する受任経験豊富な市民後見人に面接調査を行い(2)受任後の継続的支援における好事例の収集を行った。その結果、好事例の背景には共通の構成要素として、活動地域で【市民後見事業の周知】が行われ、【受任後のフォローアップ】が充実していること、また、【市民後見人登録者同士の連携・組織化】に向けた市民後見人の会への活動支援の要望があること等が明らかになった。 以上、これまでの3か年の調査から、市民後見活動は同じ地域住民同士の支え合いの精神を基盤に成り立っていることが再確認され、市民後見人登録者が活動に不安視することなく後見活動を行なうためには、地域住民に市民後見人の存在を意図的に周知していくことが必要である。また、地域の既存の社会資源に付加価値をつけて地域課題を解決した取組がみられたが、これら地域の実情に合った取組も市民後見人への継続的支援の一貫として活用可能であると考えられた。そして、市民後見人が市民後見人の会を組織し、その活動支援を希望していたことから、市民後見人としての経験を地域で活かす機会を創設していくことが重要である。
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