研究課題/領域番号 |
20K13724
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大森 万理子 広島大学, 人間社会科学研究科(国), 助教 (80837584)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 保護観察制度 / 児童保護 / 要保護児童 / 少年裁判所 / 公立学校 |
研究実績の概要 |
2020年度には、国家レヴェルの児童保護政策を研究対象とし、全米慈善矯正会議やホワイトハウス会議に関する資料を収集し、分析することを課題とした。 課題1:国家レヴェルの児童保護政策についての資料の収集と分析 2020年度の研究成果として、全米慈善矯正会議やホワイトハウス会議に関する資料収集が挙げられる。周知のとおり、2020年度は海外渡航が困難であったため、オンライン・アーカイブスを積極的に利用して史料を収集した。1899年から1924年にかけての全米慈善矯正会議の議事録や、1909年から1930年のホワイトハウス会議の議事録などを収集し、記事の整理と分析を行った。とりわけ、少年裁判所における保護観察制度に関する議論や実践についての記録が多く残されていたことを発見できたことは、重要な成果である。 課題2:州レヴェルの児童保護政策に関する資料の収集と分析 当初の計画では、2020年度は課題1を中心に研究を進める予定であったが、研究を進める過程で、国家と州の関係性を明らかにする必要性があったため、計画を変更して、カリフォルニア州の史料の整理と分析を同時に行った。上記〔課題1〕の保護観察制度と関連して、カリフォルニア州サンフランシスコとロサンゼルス管区の少年裁判所の年次報告書等を収集した。これらの史料の分析から、20世紀初頭の全米慈善矯正会議における保護観察制度に関する議論と、カリフォルニア州における実践について明らかになりつつある。これらの研究成果については、2年目となる2021年度に国内学会で発表する予定である。また、海外渡航が可能となれば、現地で追加の資料収集を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は新型コロナウイルスの世界的な感染症対策のため、当初予定していたアメリカ現地における史料調査が実施できなかった。特に、研究計画1年目は、史料調査を重点的に行うことを予定していたため、研究の進行に影響を与えた。しかしながら、計画段階で予定していた以上に、オンライン・アーカイブスや遠隔による史料請求などによって史料を入手することができたため、大幅に遅れることなく、研究を遂行できている。 2020年度は、〔課題1〕と〔課題2〕について、研究を進めた。前述のとおり、当初は〔課題1〕のみ実行する予定であったが、研究を進める上で〔課題2〕と関連させて分析することが妥当であると思われたため、同時に進行させた。 以上のように、当初計画していたアメリカ現地での史料調査は実行できなかったものの、オンライン・アーカイブス等を利用して、次年度の計画を前倒しして、研究を進行させている。このような理由で、「おおむね順調に進展」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
課題1:すでに作成した、全米慈善矯正会議とホワイトハウス会議に関する史料の目録を元に、「要保護児童」に関する議論を整理する。2020年度は、保護観察制度に着目して研究を行なったが、20世紀前半の議論の変遷をよりマクロな視点で捉え直す作業を行い、研究成果としてまとめたい。 課題2:2020年度にすでにカリフォルニア州の保護観察制度についての資料収集と分析に着手したが、上記の〔課題1〕で見出される成果をもとに、全米の議論との関係性のなかで、カリフォルニア州の実践を位置づけ直す作業を行いたいと考えている。 課題3:2020年度には民間団体の児童保護については未着手であった。当初、想像していた以上に、検討の対象としている史料から、移民への対応を児童保護の議論や実践に見出すことが困難に感じている。移民の児童保護は、民間団体が実施主体となっていたのではないかという仮説のもと、可能な限り史料を入手、分析したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度には、アメリカ現地における児童保護関連資料の調査を行うことができたなかったため、若干だが次年度使用額が生じた。2021年度には、史料館への資料請求や史料の購入などに費用をあてて、資料収集を進めること計画している。
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