研究課題/領域番号 |
20K13724
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大森 万理子 広島大学, 人間社会科学研究科(国), 助教 (80837584)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 保護観察制度 / 児童保護 / 要保護児童 / 少年裁判所 / 移民 / アメリカ / 保護複合体 / ホームティーチャー |
研究実績の概要 |
2021年度には、国家レヴェルの児童保護政策についての分析と併せて、州レヴェルの政策展開を検討するため、カリフォルニア州政府機関に関する資料を収集・分析することを課題とした。同時に、民間レヴェルの児童保護事業についての史料集にも着手した。 〔課題1〕国家レヴェルの児童保護政策についての資料の収集と分析:当初の計画では、2年目は〔課題2〕に取り組む予定であったが、前年度に引き続き、〔課題1〕に関する分析を同時に進めた。前年度に入手した、全米慈善矯正会議やホワイトハウス会議の議事録について整理し、一部を後述する学会発表の史料として活用した。 〔課題2〕州レヴェルの児童保護政策に関する資料の収集と分析:2021年度の研究成果として、前年度までに史料収集・分析を進めていたカリフォルニア州の保護観察制度についての学会発表が挙げられる。教育史学会第65回大会において、「1900年代-1910年代カリフォルニア州における保護観察制度の展開-公教育との関係に着目して-」という題目で個人発表を行った。また、保護観察への医療介入についての分析も進めた。それに加えて、研究計画に挙げている他の州政府組織についても史料収集を進めた。しかしながら、2021年度も未だアメリカへの渡航が困難な情勢であったため、大学図書館等を通して史料収集を実施した。移民住居委員会の実施していたホームティーチャー・プログラムに関する史料を渉猟し、分析を進めた。最終年度となる2022年度に国内学会で発表、論文投稿を行う。 〔課題3〕民間レヴェルの児童保護のネットワーク構築の解明:上記2点の課題遂行に加えて、〔課題3〕の民間団体の史料収集にも着手した。上記と同様、カリフォルニア州立図書館を中心とした在米の図書館や歴史協会を通じて、カリフォルニア子どもホーム協会の関連史料を収集している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度も、前年度に引き続き、世界的な感染症蔓延のため、アメリカへの渡航が叶わず、予定していた史料調査が行えなかった。一方で、在米の大学図書館等は順次、通常の業務を開始したため、史料請求によって可能な限り、史料の入手を試みた。詳細な史料目録が公開されていない等、現地で調査が必要な貴重史料についてはアクセスできなかったものの、多くの機関が史料請求に応じてくれた。そのため、計画に含めていた一部の研究対象の史料収集は、概ね可能であった。ただし、当初計画していた全ての団体について、十分な史料収集を実施することは困難であるため、一部の団体に限定して可能な範囲で研究課題を達成するよう、研究計画を見直す必要がある。 2021年度は、〔課題1〕の分析を行いながら、併せて〔課題2〕について重点的に研究を進め、〔課題3〕についても史料収集に着手した。当初の計画では、2年目は〔課題2〕に取り組む予定であったが、研究計画を適切に進める上で最終年度の〔課題3〕についても研究を開始することが必要であると思われたため、同時に進行させた。 未だアメリカでの現地調査は実行できなかったが、遠隔での史料請求を実施することで、研究を進行させている。以上の理由で、「おおむね順調に進展」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
課題1:すでに史料収集を行った、全米慈善矯正会議とホワイトハウス会議の史料を元に、移民の児童保護についてどのような議論が展開されていたか分析する。分析をもとに、カリフォルニア州における移民の「要保護児童」に対する政策や事業との関連を見出したいと考えている。 課題2:2022年度は、ホームティーチャー・プログラムについてさらなる史料収集と分析を進める。その上で、カリフォルニア州の保護観察制度やホームティーチャー・プログラムの実践が、〔課題1〕の国家レヴェルの議論の中でどのような意義を持ったか、その位置付けを明らかにしたい。 課題3:2021年度には、民間団体の児童保護についての史料収集を開始した。当初の研究計画で予定していた全ての団体について分析することが困難であるため、カリフォルニア子どもホーム協会に限定して研究を行う。同協会の実践をもとに、移民の児童保護について、民間団体がいかなる対応をとっていたか明らかにする。 以上の3つの課題の検討を通して、20世紀前半に移民を取り巻く児童保護の政策と事業がいかに変容したか考察し、研究成果としてまとめたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、前年度に続いて、アメリカ現地における児童保護関連資料の調査を行うことができなかった。遠隔での史料請求費用や資史料購入に充てたが、若干の繰越し金が生じた。2022年度も引き続き、予算の大半を史料収集費用に充てる計画である。
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