研究課題/領域番号 |
20K13728
|
研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
山口 敬子 京都府立大学, 公共政策学部, 准教授 (60772176)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 里親 / ソーシャルワーク / こども家庭福祉 |
研究実績の概要 |
昨年度はイギリスではどのようにソーシャルワークの質的向上や専門能力開発に取り組んできたのか、イギリス政府が公刊している資料をもとに検証を行った、。 イギリスにおいても、子どもの虐待・ネグレクトは重大な社会課題であり、児童保護(虐待・ネグレクトからの子どもの保護)におけるソーシャルワークについてはさまざまな取り組みが行われてきた。イギリスでは子どもの虐待死に関わる重大な事件が起きた際には検証委員会が設置され、再発防止や改善に向けた提言を行い、それが政策につながっていく。この委員会報告の中には、児童ソーシャルワークの質的向上に関する提言も多きことがわかった。 また、2000年代に起きた2つの虐待死亡事件(2000年のビクトリア・クリムビエ死亡事件および2003年のベビーP虐待死亡事件)とその調査委員会報告の勧告を経て、イギリスでは「専門能力育成フレームワーク 」というソーシャルワーク全般に共通する枠組みと、特定の分野の実践の知識とスキルを構築することができる基準として、「子どもと家族の支援のための知識およびスキル―資格取得後の基準 」を示すことで、ソーシャルワーク質的向上を図ろうとしていることがわかった。 そして、これは、日本の子ども家庭福祉ソーシャルワーカー養成課程で重視する点や、必要な能力およびスキルを開発するためのプログラムの詳細を検討するうえでの一助となるといえると考えた。特に、そもそもソーシャルワークとは何か、ソーシャルワーカーとはどのようなことを行う専門職なのか、子ども家庭福祉分野ではどのようなことが求められ、どのような価値をもって実践を行うのか、という点を日本の実践においても明らかにしておく必要性を改めて実感した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度はCOVID-19およびウクライナ侵攻の影響により本来実施予定であったイギリスの里親機関のソーシャルワーカーへのインタビュー調査等が実施できなかったため、文献の精査のみにとどまっているという状況である。こうした現状から、当初の実施計画よりも遅れていると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
状況が改善次第、調査の実施について調整を行っていく予定である。今年度も実地調査が困難であった場合は、イギリスおよび日本との比較として、オーストラリアのソーシャルワークに関する資料を収集し、比較検討することも視野に入れている。 文献調査に関しては、イギリスの里親支援団体であるcoramBAAFが発行している里親のアセスメントに関する資料をもとに、里親のアセスメントについて、特に里親登録申請時の認定アセスメントと、支援におけるアセスメントに分けて検証し、日本の実践への示唆を得たいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画期間(2020年度~2022年度)のうちに実施を予定していたイギリスでの実地調査がCOVID-19の影響等により実施できなかったため、調査に係る物品費や旅費、人件費 の支出が発生せず、前年度に引き続き次年度使用額が生じる結果となった。 次年度使用額の使途についてであるが、今年度実施予定の実地調査において使用ものとする。
|