研究課題/領域番号 |
20K13730
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
西森 利樹 熊本県立大学, 総合管理学部, 准教授 (30795860)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 成年後見制度 / 独居・低所得者 / 公的後見制度 / アメリカ公的後見制度 / 権利擁護 / 社会福祉 / 社会保障法 / 高齢者福祉 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はアメリカ公的後見制度の研究を通じ日本において公的後見制度を導入する際の検証課題を明らかにすることにある。各州の公的後見制度の課題のひとつに財政上の問題があり、特にフロリダ州は信託の仕組み等を利用して公的後見制度の財源確保を図ろうとしている。そこで、フロリダ州の公的後見制度の財源確保のあり方を検討した。 フロリダ州では、公的後見制度の支援を唯一の目的とする直接支援組織(DSO)(貧困者後見財団(FIG))が設立されている。そして、貧困者後見財団(FIG)は公的後見制度を支援する方法としてフロリダ州公的後見制度共同特別支援信託(FPGPSNT)を創設している。この信託は特別支援信託(SNT)であるため主目的は障害者支援である。フロリダ州公的後見制度共同特別支援信託(FPGPSNT)は、障害者支援にくわえ障害者本人の死亡後の残余財産を公的後見制度の運営の財源に充当する。信託の設定では、受託者が2人おり貧困者後見財団(FIG)が設立共同受託者となり、管理受託者が高齢・障害者擁護後見法人(AGED)である。これは信託の安全性、確実性、透明性を達成するためである。またバークシャー信託助言(Berkshire Trust Advisory Services Corporation)が信託保護者として監督責任を負っている。こうした共同特別支援信託(PSNT)の利用は公共の利益が得られる真の官民のパートナーシップとなると評価されている 。 わが国においては、狭義の公的後見制度は未整備であり、今後の新制度の創設には財源の確保が重要課題となる。共同特別支援信託(PSNT)は、今後の福祉的な信託の可能性として、福祉的信託における障害者に対する支援といった目的にくわえ、制度の財源確保のための方法として機能するような信託の制度構築の可能性について検討する余地があるのではないかと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルスの感染拡大により国内外の出張が困難となったことにくわえ、感染拡大防止の対応が継続的に求められたことにより、当初予定した研究活動を遂行することには大きな困難が伴った。 しかし、国内において収集及び検討が可能であった文献の検討については行うことができ、アメリカにおいて課題の一つされている公的後見制度の財源確保のあり方に関し、フロリダ州の制度内容などを明らかにすることができた。 また、オンラインによる国際シンポジウムに参加し、本研究の課題に関しても諸外国の研究者等の専門家と議論をすることを通じ研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
アメリカ各州において課題となっているように、公的後見制度の財源確保のあり方に関しては、フロリダ州の取り組み内容をさらに掘り下げていくことにくわえ、他州の取り組みに関しても今後さらに検討を続ける。 公的後見制度の提供体制がどうあるべきかに関する検討も今後さらに必要になる。社会福祉機関モデルが主流であるなかで近年改正等をしたネブラスカ州やコロラド州が裁判所モデルを採用した点は興味深く、その点の詳細に関して掘り下げた検討を進めたい。また、提供体制に関連しては、公的後見人の不正などを発端とし、フロリダ州において成年後見制度の大改正に向けた動きが進んでいる。そうした動向の詳細に関しても検討し、わが国の今後の法制構築に向けた示唆を得たい。 研究実施にあたっては、国内外の文献の収集と精査を続けるほか、新型コロロなウィルスの感染拡大の状況等を見極めつつ国内外の出張を伴う研究活動の可否について検討する予定である。ただし、世界的にオンラインの手法が大きな広がりを見せていることから、海外渡航等が中止になりうること前提とし、オンライン研究会や国内にいながら情報を収集する方法について精査しつつ、この状況においても決して研究を諦めることなく、現状における最大限の研究の進捗を図るよう取り組む所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は新型コロナウィルスの感染拡大との関係で国内外の出張が中止になった。旅費として予定としていた費用の一部は文献収集のために使用したものの、予定額を使用できなかった。次年度は、感染拡大状況などを見極めつつ、資料購入や国内外の出張などを含め、いただいた科研費を大切に使用する予定である。
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