本研究の目的は、精神障がい当事者(当事者)を対象とし、リカバリープロセスと生活の困難さの関連に基づく構造的関係性を踏まえた生活支援システムを構築することである。 2020年度調査により、潜在曲線モデルに基づくリカバリープロセスと生活の困難さの構造的関係性が推定され、当事者が抱える生活の困難さと困難さの主観的な「要因」を低減する支援策の明示が課題として挙がった。また、生活支援システムの基盤となる当事者と専門職との関係構築プロセスの要素について、2021年度は当事者を対象としたインタビュー調査の逐語データから抽出し、2022年度は生活支援システム作成の参考情報を得るために、ピアサポートを専門とする職員(ピアスタッフ)および専門職(看護師、精神保健福祉士、作業療法士)を対象としたインタビュー調査の逐語データから抽出した。 2023年度は、当事者のリカバリーに向けた生活支援システムの構築のために、リカバリーに対する当事者が抱える生活の困難さ、および困難さの主観的な要因における1年間の縦断的データを用いて各要素の関連について分析した。その結果、リカバリーに対し、生活の困難さおよび困難さの主観的な要因が関連していることが明らかとなり、当事者のリカバリーに向けた生活支援システムにおいて、生活の困難さおよびに困難さの主観的な要因に焦点をあてて関与することの重要性が示唆された。
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