研究課題/領域番号 |
20K13734
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
天畠 大輔 中央大学, 文学部, 特別研究員(PD) (80866947)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 発話困難な重度身体障がい者 / 重度身体障がい者 / 当事者事業所 / 自薦ヘルパー / 就労支援特別事業 |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染拡大に伴い,計画の大幅見直しを余儀なくされた.調査対象の多くが,呼吸器等に障がい/疾患を持つことから慎重を期し,訪問は断念.海外調査も延期とした. 国内調査ではオンラインを活用し,当事者事業所を運営する「発話困難な重度身体障がい者」3名の調査を実施した.地方で当事者事業所運営する事例として,富山県富山市のALS当事者とその運営する事業所のスタッフにインタビューを計4回実施した.また,都市部と地方の差異を明確にするために,東京都で当事者事業所を運営する重度身体障がい者2名にもインタビューを実施した. また,複数の障がい当事者を理事としておき,事業体だけでなく運動体としての役割も持つCIL(Center for Independent Living)を地方で経営する代表当事者にもインタビューを実施している. これらにより,地方では介助者不足と重度訪問介護事業を行う事業所不足が深刻である様子が浮き彫りとなった.そこで実際に介助者不足に悩む地方在住の重度障がい者2名(30代男女1名ずつ)に延べ20回のインタビューを実施し,その2名が一般社団法人わをんの支援を受けて自薦ヘルパーを利用し,継続する過程の追跡調査を継続している. また,これらの調査の結果,重度障がい者の就労ニーズが置き去りにされている現状と,昨年度より実施された「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」がほとんど運用されていない実態が明らかとなった.重度障がい者の就労支援については2021年度の研究課題とする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新型コロナウイルス感染拡大により,当初の計画からは大幅な見直しが余儀なくされ,積極的なフィールドワークが困難であった。 しかし、コロナ禍以前よりICTを活用したオンラインコミュニケーションツールを多用していたため、比較的スムーズに対応出来た。 また,重度身体障がい者の支援を実施している「一般社団法人わをん」と連携することで,調査対象者の選定や分析対象とするテキスト(同法人が実施する「当事者の語りプロジェクト事業」によるもの)の提供を受けることにより,当初の想定以上の進展がみられた.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は新型コロナウイルス感染状況に応じて現地調査も視野に入れながら,当事者事業所の運営と重度障がい者の生存保障について,並びに就労支援特別事業の実態調査も並行して実施する. 具体的には,引き続き一般社団法人わをんの「当事者の語りプロジェクト事業」のテキスト分析を継続し,当事者事業所と生存保障の関係性について考察を深める.調査対象は24時間介助の必要な,重度訪問介護サービス利用者とする. また,「重度障害者等就労支援特別事業」 の運用実態や地域間格差を検証することで,現状制度の問題点を洗い出す.これは2020年10月から開始された厚生労働省のモデル事業で,重度訪問介護制度では認められていない経済活動中の介助サービス利用について,雇用と福祉を連携させるかたちで認めた制度である.しかし,報酬単価や対象範囲は各自治体の裁量に委ねられており,東京都内の自治体担当者からは「市民から要望があっても事業の枠組みを整備するのに時間がかかり,速やかな導入は難しい」との声もあがっている.全国ではまだ14自治体でしか導入されていない現状もある.そこで,先駆的に同事業を推進してきた埼玉県さいたま市,今年度から予算確保がなされた京都府京都市,および同制度の整備に着手し始めた東京都武蔵野市にヒアリングやアンケート調査を行う.さらに各自治体の利用者,その介助者及び介護事業所,当事者を雇用する企業にも調査を実施し,本制度の課題や問題点を整理し,重度身体障がい者の生産活動を支える為の社会的弊害を洗い出す. また,モデル事業ではないが,重度身体障がい者が分身ロボットを使い働く事例も検証の対象と位置付ける.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大により,当初の計画から大幅な見直しが余儀なくされた.次年度は感染状況を注視しながら,現地調査も視野に入れて研究活動を展開する.
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