研究課題/領域番号 |
20K13735
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
竹内 友章 東海大学, 健康学部, 特任助教 (60755825)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 地域共生社会 / コミュニティワーク / コミュニティオーガニゼーション / 社会的連帯経済 / 公的責任 / 自治 / 地域福祉の政策化 |
研究実績の概要 |
2022年度は、文献研究として「政策化される地域福祉推進に関する課題の整理」、「地域福祉における『公的責任』に関する考察」および、事例調査をおこなった。 「政策化される地域福祉推進に関する課題の整理」では、福祉国家の再編の過程で「地域福祉の主流化」や「地域福祉の政策化」が進展している。介護保険の改正や「ニッポン一億総活躍プラン」「地域共生社会」「我が事・丸ごと」など国から出される方針はどれも地域住民の積極的な地域活動への参画が期待される。一方で地域では社会的孤立の問題などが深刻化し、地域における互助的機能も弱体化しており、理想と現実のギャップは大きいことを問題意識に、「地域共生社会」の実現に向けた提言をまとめた行政資料を題材としながら、政策による地域福祉推進に含意される価値やその特徴、課題を明らかにすることで、今後の地域福祉研究の論点整理をおこなった。 「地域福祉における『公的責任』に関する考察」では、「地域包括ケア」「地域共生社会」など地域を基盤にした社会福祉政策の展開は「地域福祉の政策化」とも言わるが、住民参加を重視した政策化に対しては「住民の資源化」「トップダウンによる地域づくり」「公的責任の後退」などの課題も指摘され、特に公的責任減退への危機感は高い。一方で、「住み慣れた地域」や「その人らしさ」への注目は、専門職による介入や支援の前後にある生活や日常そのものに内在した支援やケアへの注目であり、それらの役割は「専門職以外」の地域や家族が重要な責任を抱え込んでいかざるを得ない構造もある 。地域福祉推進には公的責任を指摘しながらも、公では充足できない「生活の質」に注目した住民参加を促進するという二重構造が存在することを踏まえ「公的責任」をマジックワードにするのではなくその概念を再考した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染の影響により、フィールド調査とくに、アクションリサーチを実施することができなかった。そのためオンラインでのヒアリングにとどまり、アクションリサーチを実施することができていない。21年度に引き続き、文献研究を中心におこなってきたがリサーチクエスチョンの精緻化をすることができている。とくに「社会的連帯経済」をキーワードに自治と地域活動の連続性を確認することができた。政策化がすすむ地域福祉において、どのようにあるべき地域福祉推進の研究を行う必要があるのかを引き続き検討していきたい。2023年度はフィールド調査の実施をするための準備と調整を行っている。引き続き社会状況を見ながら、理論研究を重点的におこなうことになる可能性はあるが、オンライン等を活用して研究を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染症が5類へ移行し、新しい生活様式に社会が適応していく過程にある。それらの状況をみながらフィールド調査を再開する。先述した通り受け入れ先との調整はすでに済ませているため、現地に負担のかからない時期に再訪し、調査等の実施を行う。それまではオンライン調査を進めていく。 また、2021年度の文献研究により「社会的連帯経済」という視座を得た。2022年度は社会的連帯経済と地域福祉をキーワードに文献の収集に努めた。国内において黎明期の研究のため海外の先行研究の文献収集、事例の収集と整理を行なっている。事例収集の過程で海外の研究者とのネットワークを構築することができたため、コミュニケーションを図りながら国際学会での発表を目指す。 昨年度の研究成果を報告するために6月に開催される地域福祉学会へのエントリー、論文投稿(査読付き)をすでに済ませている。学会発表や論文投稿を通して社会への発信に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度からの新型コロナ感染症の影響によりフィールドワークの実施をおこなうことができていない、また2021年度に半年間の育児休業を取得したため、計画当初から研究スケジュールが変更になったため次年度使用額が生じている。 過去3年間はフィールドワークの代替としてオンラインでのヒアリング等を実施してきた。また今年度は新しい生活様式への移行時期のため現地訪問が可能となることが予測されている。家族と相談をしながら現地調査のスケジュールを確保する予定である。
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