2023年度は、文献研究として「地域福祉におけるコミュニティ・オーガニゼーション論の受容と変容」、「コミュニティの制度化と地域福祉の展開」の検討を行った。 地域福祉におけるコミュニティ・オーガニゼーション論の受容と変容では、地域福祉論におけるコミュニティ・オーガナイジングの理解に影響を与えた背景や要因を明らかにすることを研究目的とした。福祉国家の再編の過程で「地域福祉の主流化」や「地域福祉の政策化」が進展し政策サイドからも地域における包括的な支援体制の整備がすすめられるなど、「地域づくり」への関心が高まっている。それらに伴い、地域における社会資源開発の実践などを指すコミュニティ・オーガナイジングへの関心も高まっている。日本の「地域福祉」が、アメリカのコミュニティ・オーガニゼーション論を基盤に展開されてきたこと、英訳の困難な土着の概念であることを踏まえ、コミュニティ・オーガニゼーションの受容と変容から地域福祉論展開を捉えることを試みた。 コミュニティの制度化と地域福祉の展開では、地域福祉論の展開と地域福祉の主流化・政策化を一体的に捉えることで「地域共生社会」の実現のための課題を検討することを目的した。そのために①住民主体の概念の展開、②地域福祉の政策化における住民主体の位置付け、③支え合いの論点整理をおこなった。 研究の成果は、①コミュニティの制度化と関連づけることで、住民主体の変容、②地域社会の被支援者化の課題と、つながりの希薄化の構造的な課題や資源不足を不問にされている課題、③「新たな支え合い」に参加する住民の能力形成と、地域活動への参加/阻害に影響を与える要因を実証的に研究することの重要性の3点を指摘したことである。これらを通して、地域福祉研究として地域住民が共同的な活動の中で、相互の連帯や信頼を生み出す活動のあり方を検討する重要性を確認した。
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