本研究事業全体を通じて、①研究期間の前半では、生活保護制度において「いかなる論理」で生活保護制度における大学等「世帯分離就学」が正当化されているのかを社会保障審議会の議事録から分析した。その結果、(A)「大学等非就学者/高卒就職者/非利用世帯との均衡」を理由に、大学等就学の「最低生活保障への包摂不可能性」が指摘されていたこと、(B)これにより「世帯内就学」の正当性が否定され、(C)結果として「世帯分離就学」が消極的に正当化されていたことを明らかにした。 ②研究期間の後半では、COVID-19の影響を受け当初の予定(スコットランドへの渡航・調査)を変更し、都内A市の生活保護利用世帯出身の大学等就学者を対象としたインタビュー調査を実施した。2023年度は、22年度に続き、大学生及びその保護者への調査(インタビュー調査、一部書面での調査)を実施し、あわせて、調査結果に関する部分的な分析・公表(国立社会保障・人口問題研究所での研究報告、日本社会福祉学会・関東部会での研究報告を行った。急遽の計画変更であったこともあり、2024年度現在も調査・分析を継続しているが、(A)ある種の「逸脱」事例(協力的な保護者、就学者当人の高学力、難関大学への進学等を含む)においてさえ、(B)出身世帯(保護者)からの少なからぬ経済的援助や当人たちの支出の抑制等によりどうにか就学継続が成立している状況にあることが示唆されている。 今後、上記の知見を総合しつつ、生活保護制度と教育政策(とりわけ奨学金政策)の在り方を提示することを目指したい。
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