研究課題/領域番号 |
20K13739
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
松原 由美 (松原由美) 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (90728586)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 非営利組織 / 公益性 / 非営利組織の利益概念 / 社会福祉法人 / 経営指標 / 財務指標 / 非財務指標 / オランダ |
研究実績の概要 |
非営利性の定義、公益性の定義に遡り、非営利性と公益性が求められる社会福祉法人の経営指標について考察した。 特に非営利組織については先行研究から通説の定義の問題点を明らかにし、また筆者の従来の定義の課題を明確にし、新たな非営利組織の定義と、それに基づく非営利組織の利益概念について理論研究を行った。 また、新型コロナウィルス禍にあったことから、コロナ禍における経営状況やコロナ対策に係る新たな支出状況についても、福祉医療機構の調査結果等に関し調査する他、全国社会福祉法人経営者協議会の地域共生社会推進委員会の委員メンバーが経営する社会福祉法人と、厚生労働省の調査研究事業で先進事例として取り上げられた社会福祉法人の計19法人へメールと電話にて調査を実施した。さらにリスクマネジメントの現状と課題についても、文献調査と上記法人へのZOOM等を用いたインタビュー調査を実施した。 一方、日本と同様に介護保険制度を有するオランダとドイツにおける福祉事業の法人の経営指標について、また、非財務指標の参考として、介護の質に関する情報の公表制度の現状と課題について文献調査とヒアリング調査を行った。ヒアリング調査は、オランダ、ドイツの現地の社会保障研究家や大学教授へ、ZOOMやメール等を用いて実施した。 以上より、財務・非財務指標のたたき台を作成した。これらたたき台の指標を基に、今後は実際に社会福祉法人においてこれら指標を基にした地域住民や職員を交えた討論や経営改善の取組を重ね、経営指標のブラッシュアップを図る予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルス禍では、新しいヒアリング先に新たにヒアリング調査を申し出ることができなかった。そのため、親しい法人へのヒアリングに終始したことより、保育等子供関係の事業を運営する社会福祉法人へのヒアリング調査は未実施である。だが、高齢者事業を実施している法人へは、首都圏の近隣法人に限定されるものの何度か現地訪問も含め、調査ができた。 新型コロナウィルス禍で現地調査よりもZOOMやメールでのやり取りが優先されるようになった結果、海外の研究者へのインタビュー調査が、ZOOMやメールで可能となり、先行して福祉事業の経営状況や制度の変化、非財務指標について調査を実施した。一方で海外の福祉事業者へのヒアリング調査は、たとえZOOMやメールでもコロナ対策で緊急事態にあるため実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
①理論研究の続きを行う。具体的には、必要差額の具体的中身の精査、必要差額を出す前の経営のあり方、社会福祉事業の多くは公定価格であるため公定価格の決め方、参加型評価等に関する先行研究を実施し、指標開発の一助とする。 ②実証研究のプレ調査を行う。具体的には、昨年度たたき台として作成した社会福祉法人の経営指標を基に、実際の社会福祉法人へ事例調査を行い、経営指標の見直しを実施する。 ③海外現地調査は今年度と来年度に予定しているが、新型コロナウィルスの状況を注視したい。今後は海外調査や理論研究を踏まえた財務指標と非財務指標を活用し、社会福祉法人の経営事例調査を行う予定である。アメリカへの渡航は今年度は無理と考えられ、その分を昨年度調査したオランダ、ドイツについて更に先行して文献調査とメールやZOOM等を用いたインタビュー調査で研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス禍で、現地調査の機会が限られたため。
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