研究課題/領域番号 |
20K13746
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
益田 啓裕 追手門学院大学, 心理学部, 講師 (70846279)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ソーシャルペダゴジー / ライフストーリーワーク / 社会的養護におけるケア |
研究実績の概要 |
令和2年度は新型コロナウイルスによる影響から、施設職員への対面インタビューを計画通りに進めることが難しく、令和4年度以降に予定していた社会的養護におけるケアにおける理論的な整理を先に実施した。 まず、北欧の社会的養護におけるケア理論が体系化されたソーシャルペダゴジーの英語著作の翻訳作業を進めることで、ソーシャルペダゴジーにおける理論的に重要なコンポーネントを抽出した。抽出したコンポーネントに基づき、養育者が子どもに関わる場合のケアに関する理論を日々の実践にどのように活かすかについて、児童養護施設職員とのディスカッションを行い、職員からのフィードバックを収集した。その結果、職員同士の価値観の違いを受け入れた上で子どもへの関り方を話し合うことが、チームとしての子どもへの効果的な働きかけにつながることが示唆された。 また、社会的養護における子どもへのケアに関する実践及び理論を論文化して発表した。論文では、社会的養護において実施されているトラウマインフォームドケアやペアレントトレーニング等を踏まえた実践が、コミュニティや学校における支援へ活用できることを論じた。 また、社会的養護におけるケアについて学会発表を行った。子どもの生い立ちの整理を行うライフストーリーワークにおいて、トラウマの症状がある子どもへの実施はためらわれがちな現状がある。しかし、ライフストーリーワークに含まれる、現在のケアする人たちとのサポートネットワークを外在化することや、安全感・安心感を高めるリソースの活性化はそのような子どもへも有効に作用する可能性があることを、実践例の紹介を通じて報告し、日常のケアにおいてこれらを意識して働きかけることの重要性を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスによる影響で、生活のケアと心理的支援に関する施設職員への対面インタビューを進めることが難しい状況が令和3年度第1四半期においても続いている。そのため、当初令和4年度以降に予定していた児童福祉施設におけるケアに関する理論的な整理を先に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年~3年度に予定していた質的研究については、インタビュアーと施設職員との直接的なやりとりを通じた気づきを重視する研究の性質上、インタビューは対面実施が望ましいと考えているが、今後も対面実施が制限される場合は、オンラインでのインタビューに切り替えることも視野に入れる。 今後も引き続き令和4年度以降に予定していたケアに関する理論的整理を進めると共に、本プロジェクトに含まれる社会的養護におけるケアのトレーニングのモジュール開発の一環として、公認心理師カリキュラム「福祉心理学」が受講生のケア意識にどのような影響を及ぼすかについて検証を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初令和2年度に予定していた質的調査のインタビューが新型コロナウイルスの影響で実施が遅れており、謝金として計上していた分に未使用額が生じた。令和3年度以降は社会状況を見ながら過年度分の計画の実施を予定している。
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