研究課題/領域番号 |
20K13752
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研究機関 | 別府大学 |
研究代表者 |
池田 真典 別府大学, 文学部, 准教授 (10803471)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 精神保健福祉 / 精神病理学 / 社会福祉思想 / 地域福祉 / 医療福祉 / フランス / 地域生活支援 |
研究実績の概要 |
1.「〈生活者〉から見たわが国における精神保健医療福祉改革」(生活協同組合研究 2021.11 vol.550、p42-p49、2021年11月)において、1970年代に谷中輝雄によって地域社会で展開されてきた精神保健福祉活動を取り上げ、その制度的、法的改革に関する議論を行い、生活のしづらさを抱える障害当事者の自己決定の方法を探り、「ごく当たり前の生活」を実現するソーシャルワーク実践の今日的意義を示した。 2.精神病理学会にて「精神分析との関連からみたフランスのセクター制度改革とケアの継続性」を研究発表した。精神障害者リハビリテーション学会にて「フランスにおける地域精神保健福祉の動向と経路の概念について」の研究発表を行った。 3.フランスの精神科医で、リール第2大学名誉教授Pierre Delionの『人間の精神医学のための闘い』“Mon combat pour une psychiatrie humaine”(Albin Michel, 2016)を永野教授、三脇教授らと9月に出版予定である。またピエール・ドゥリオンを9月に招聘し、11日にソフィアシンポジウムとして「人間の精神医療のための闘い ―発達障害の専門家は語る」を上智大学にて永野仁美教授らと開催する計画である。また来日にあわせて、9月9日には京都大学でも二コラ・タジャン(京都大学特任准教授)による事例検討会を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により、国際間の移動が制限されたため、フランスの精神科病院、地域の医療心理センターなどでの視察、交流など計画できず、文献のみでの調査になった。結果、当初よりも研究課題の掘り下げが不十分となった。 翻訳書の出版も大幅に遅れた。これはコロナ禍によって国内の出張、会議などが制限され、翻訳者間の意思疎通に課題が生じたたためである。また読者の理解促進のため解説文を作成したり、訳者注を新たに加える作業など追加して行った。それに伴う校正作業に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
1.海外との往来制限が緩和されれば、フランス、ベルギーなどで、障害者福祉の課題、精神科医療制度改革の現状と課題克服の取り組みなどを調査する。とりわけ、フランスでも近年、精神障害者が新たに「障害者」の範疇に加えられたこともあり、医療、福祉、保健の各分野の連携が課題となっている。この点は精神障害者の社会的入院の解消、地域包括ケアシステムの構築などの困難な課題に直面している日本の状況においても同様であり、フランスの研究者、現場の責任者などと積極的に意見交換したい。 2.文献調査の過程でフランスにおける精神障害者の家族受入制度(日本の里親制度の成人版)が明らかになった。その歴史、現状について研究を行った結果、先行する日本での研究があまり状況で、早期に複数の論文を執筆予定である。可能であれば、病院との連携のもとでどのような家族受入が行われているか現地調査も行う。また2006年にベルギーで自閉症児の入所施設で現地調査を行ったが、その後のインタビュー調査などにより、フランス国内で自閉症児の受入施設が不足し、比較的余裕のあるベルギーに児童が移送されている証言が得られた。この点を裏付ける研究を行うことで、自閉症児の扱いをめぐりフランス社会が抱えている葛藤と課題を明らかにできる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、移動制限が生じ、フランスでの現地調査が実施できなかった。またピエール・ドゥリオンの招聘が1年遅れたため
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