研究課題/領域番号 |
20K13758
|
研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
久米 裕 秋田大学, 医学系研究科, 講師 (40638269)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | フレイル / 認知症 / 予防 / 概日リズム / ライフスタイル / 高齢期 / コミュニティ活動 |
研究実績の概要 |
本研究では、(1)フレイル状態から回復した高齢者におけるライフスタイルの構成要素を明らかにすること、(2)それらの構成要素が高齢期における概日リズムと関連性が存在するのかを把握し明確にすることを目指す。令和2年度の研究遂行の概要として、COVID-19による感染拡大の影響は秋田県内の対象地区にも及んでおり、自治体および地域住民が主体となって継続されている認知症・フレイル予防を目的とした運動プログラム実践は3ヶ月遅れて当該年度8月以降に開始された。加えて、従来のコミュニティ運営とは異なり、実施会場の収容人数を踏まえて参加対象者が大幅に縮小された形態にて当該年度のコミュニティ活動は進められた。以上を背景として同プログラムが進められた結果、当該年度に収集された分析対象は28名であった。これらの対象データを解析したところ、概日リズム指標のうちリズム断続性および1日24時間のうち最も活動的な10時間の平均身体活動量を含む2指標がフレイル状態からの回復を検知するために有用なバイオマーカーとなる可能性が示唆された。加えて、身体活動、文化活動、地域活動に分類されたライフスタイルの構成要素では、フレイル状態が悪化した群において従事する活動数が低下する傾向を示した。先述のとおり得られた予備的知見は、今後増やしていく対象者数に応じて、改めて検証される計画である。今後の研究遂行に当たっては、感染症対策に準じたコミュニティ活動の継続が不可欠であり、自治体や関連団体と連携しながら研究課題を遂行していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に実施した研究の成果として、対象地区のコミュニティ活動から収集された分析対象者数は28名であり、平均年齢(標準偏差)は75.6(5.9)歳であった。初回評価時のフレイル判定に応じて、全対象のうちフレイルが3.6%、プレフレイルが14.3%、ロバスト(健常)82.1%であった。6ヶ月間の運動プログラム実施後、フレイル状態から改善した対象は2名(改善群)、変化がない対象は20名(変化なし群)、フレイル状態が悪化した対象は6名(悪化群)であった。3群間の概日リズム指標を比較したところ、悪化群におけるリズム断続性は高く、1日24時間のうち最も活動的な10時間の平均身体活動量(M10値)は低い傾向が観察された。一方で、改善群では介入6か月後にリズム断続性が軽減し、M10値が向上していた。したがって、フレイル状態からの回復を検知する可能性のある概日リズム指標はリズム断続性やM10値であると推測された。 また、ライフスタイルの構成要素を身体活動、文化活動、地域活動に分類し検証したところ、介入6ヶ月後時点の各活動に従事する割合は身体活動で92.9%、文化活動で82.1%、地域活動で39.3%であった。さらに、3群内の活動参加数(身体活動・文化活動・地域活動のすべてに参加=活動数3となる)に応じて、初回と6ヶ月後評価の変化を比べたところ、悪化群において6か月後の活動参加数が減少する傾向にあった。したがって、地域社会における活動範囲の縮小がフレイルへ移行しやすいライフスタイルの要素になりうると推測された。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況を踏まえて、本研究課題は概ね順調に進展している。当該年度を通して整備されたコミュニティ活動に対するCOVID-19感染症対策は次年度以降も継続的に応用される計画であり、当該年度を超える対象者数を確保できると予想する。しかしながら、当該年度の全対象のうち全体の9割が女性であり、性差のバイアスがすでに発生している現状である。既存のバイアスを考慮し、地域住民に対するコミュニティ活動への公募は自治体や自主サークル活動の関連団体と連携しながら進めていく。今後の研究を推進するために、コミュニティ活動の継続は不可欠である。認知症・フレイル予防を目指した同プログラムは、COVID-19感染症対策を遵守するとともに、令和3年度7月下旬以降に開始される計画で現在調整中である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の物品費として計上した新規測定機器(アクチグラフ)の購入費用は、既存の保有機器における不具合機が多数発生した不測の事態に対処するためのメンテナンス費用(項目:その他)として支出された。また、国内学会発表などのために計上された旅費は、昨今のCOVID-19感染拡大に伴う学会の現地開催中止、Web開催への移行に応じて支出額として計上されなかった。以上、次年度使用が生じた理由である。今後の使用計画として、測定機器(アクチグラフ)は対象者の手首に7~14日間連続して装着されるため、腕時計バンド部分の摩耗を含む計測機器の消耗が今後も予想されている。今後増加する見込みの対象者数を踏まえて、測定機器(アクチグラフ)1台の新規購入も計画している。
|