研究課題/領域番号 |
20K13758
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
久米 裕 秋田大学, 医学系研究科, 講師 (40638269)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フレイル / 認知症 / 予防 / 概日リズム / ライフスタイル / 高齢期 / コミュニティ活動 / 社会福祉 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、(1)フレイル状態から回復した高齢者におけるライフスタイルの構成要素を明らかにするこ、(2)それらの構成要素が高齢期における概日リズムと関連性があるのかについて明らかにすることである。令和3年度の研究遂行の概要として、令和2年度に引き続き各自治体におけるCOVID-19の感染対策を遵守しながら、当該年度7月よりに認知症・フレイル予防事業が開始された。以上を背景として同プログラムを実施した結果、当該年度に収集された分析対象は47名であった。これらの分析対象を令和2年度対象28名と合算し、分析対象者は75名となった。この分析対象におけるフレイル状態の変化を分類した結果、運動介入前後でフレイル状態に改善が認められた対象は12名(改善群)、フレイル状態に変化なしの対象は53名(維持群)、フレイル状態に悪化が認められた対象は10名(悪化群)であった。現在、このフレイル状態の変化に応じた分類(改善群、維持群、悪化群)を従属変数に設定し、概日リズム指標を独立変数とした2項ロジスティック回帰分析を実行中である。一部の結果として、フレイル改善群は概日リズム指標のうちリズム安定性(Interdaily Stability, IS)がその関連因子(年齢、性別、教育年数を調整因子として投入)として抽出されており、フレイル悪化群では1日24時間のうちで最も活動的な10時間における身体活動量の低下と休息と活動のバランスを反映する概日リズム指標(Relative Amplitude, RA)がその関連因子として挙げられた。以上の結果は、本研究目的の1つを明らかにすることに繋がっており、令和4年度はさらなるデータ解析とともに論文投稿も視野に入れて研究課題を遂行していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度に収集した分析対象データは47名であり、令和2年度の分析対象者数(28名)より増加した。各自治体が主導で開催される認知症予防・フレイル予防事業において、COVID-19感染対策も令和2年度と比べてより良い整備がなされ、令和3年度は事業開始および再開の遅延も発生せず遂行されたことが対象者数の増加に繋がったといえる。だが一方で、令和2~3年度の本研究の登録者数は実質128名となっており、約50名ほどの対象者はCOVID-19感染拡大が一つの要因となってドロップアウトしている。本研究課題を遂行するに当たって、COVID-19感染拡大の影響は大きいと推察できる。 また、ライススタイルの構成要素を身体活動・文化活動・地域活動に分類し検証したところ、その多くは個人で実施できる身体活動、文化活動にその実施割合は偏っており、COVID-19感染拡大下の地域活動による社会参加の制約は否定できない。 以上のように、本研究の分析対象はCOVID-19感染拡大の影響を踏まえて、研究課題を検証する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況を踏まえて、本研究課題は概ね順調に進展している。令和4年度の認知症予防・フレイル予防事業は継続的に実施される計画であり、分析対象データの追加は可能な研究環境である。本研究課題の令和4年度の実施計画は論文執筆および国際学術雑誌への論文投稿としており、かつデータ収集の追加に関する予備年度にも設定されている。すでにフレイル状態の変化分類に対する概日リズム指標の予測因子を抽出できているため、分析対象の追加も考慮しながら研究結果の公表を視野に本研究を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の支出品目は、測定機器(アクチグラフ)のメンテナンス費用およびデータ解析を円滑に遂行するために導入された解析ソフトウェア追加ライセンスの購入である。また、本研究の途中経過は世界老年精神医学会(オンライン開催)にて口述発表されており、当該学会参加費用が支出費用として計上された。なお、学会参加に伴う旅費はオンライン開催の国際学会となったため発生しなかった。次年度はデータ収集の予備年度にも設定されているため、計測機器のメンテナンス費用と論文作成に伴う英文校閲料および論文掲載料(オープンアクセス料)などの支出を見込んでいる。
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