心身の虚弱(フレイル)状態にある高齢者は認知症を発症する高いリスクを有しているため、フレイル早期発見とそれを改善する有効な実践法の確立は、超高齢社会の下、社会福祉領域の重要課題である。秋田県内の地方自治体と共同したフレイル予防のための介入研究を通して、フレイル状態から改善する事例が確認されているが、その効果量には個人差が生じている。本研究ではフレイルの改善に寄与する要素をライフスタイルの変容という視点から解明する。対象は65歳以上の秋田県内在住高齢者、実施期間は令和2~4年度、研究目的は1)フレイル状態から回復した高齢者におけるライフスタイルの構成要素を明らかにすること、2)それらの構成要素と高齢期における概日リズムの関連性を明らかにすることである。研究期間全体を通じて実施された本研究において、概日リズム指標(Nonparametric Circadian Rest-Activity Rhythm Parameters)の安定性と断続性がフレイル改善の関連因子であると特定した。さらに、6か月間のフレイル予防運動プログラム前後によるフレイル回復の状態(フレイル改善群12名、維持群53名、悪化群10名)に応じた身体活動量の日内変化を調べてみると、フレイル状態が悪化する群では、同予防プログラム介入前から他の2群と比べて、日中の身体活動の低下、特にAM7:00からAM10:59のSpanを含むMorning-Hour Activityの低下が有意に観察された。フレイル状態の悪化群に観察される不活動的なライフスタイルは、フレイル改善群における概日リズム関連因子(安定性、断続性)の同定とともに、身体的フレイルを防止するための重要な構成要素であることが示唆された。
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